Siemens Gamesa Renewable Energy(Siemens Gamesa)は2017年11月30日(ドイツ時間)、独自方式の蓄電設備の建設を12月から開始すると発表した。建設場所はドイツ・ハンブルグにあるTRIMET Aluminium社のアルミニウム精錬工場の敷地内。風力発電設備も併設し、この設備で発電した電力を蓄電設備に貯める。2019年春に試運転開始の予定だ。
今回建設する蓄電設備は、Siemens社の風力発電部門とGamesaの合併でSiemens Gamesaが発足する以前からSiemensが研究していたもので、「FES:Future Energy Solution」と呼ぶもの。Siemensは検証用の設備を建設して、機器を実際に動作させながら検証を続けていた。
FESで蓄電池の役割を果たすのは、大量の岩石を詰め込んだ容器。内部の容積は800m3で、およそ1000トンの岩石が詰まっている。容器は厚さ数mの断熱材で包んであり、容器の外壁などから熱が出入りすることはない。
この容器に充電するには、風力発電で得た電力でヒーターとファンを稼働させて熱風を作り出し、容器に送り込む。すると内部の岩石が熱を吸収保存する。電力を熱エネルギーに変換して蓄積するわけだ。蓄積した熱エネルギーから電力を取り出すときは、岩石の熱気を専用の機器に送り込む。機器は熱で水蒸気を作り、タービンを回して発電する。今回は風力発電で得た電力を蓄積するので、十分な風速があるときは発電した電力をそのまま送電系統に流し、余剰分を熱にして蓄積する。そして風が弱く、発電量を期待できないときは熱として蓄えたエネルギーを電力に変換して送電系統に供給する。
図 「Future Energy Solution」の概要。電力を熱に変換して岩石に蓄積する
出所 Siemens
今回建設するFESに付属する岩石の容器は、内部の岩石の温度が600℃という条件で、電力にしておよそ30MWh(3万kWh)に相当するエネルギーを蓄積可能。エネルギーの出力値は電力にすると1.5MW(1500kW)になるという。この値は、ドイツの平均的な世帯1500戸が消費する電力量や、50台の電気自動車を満充電状態にできる電力量に相当するという。
発電量が不安定な太陽光発電や風力発電の設備に蓄電池を併設して、発電量の変動を吸収する例は少なくない。このようなときは、リチウムイオン蓄電池を使用することがほとんどだ。しかしSiemens Gamesaは、現存する蓄電技術のほとんどは蓄電容量が小さく、価格競争力が弱いと指摘する。
一方で、Siemens GamesaのFESは歴史があり、十分に成熟した技術を使っている上、高価な蓄電池の代わりに岩石を使用する。ヒーターやファン、タービンなどの機材はごくありふれた量産品を使う。蓄電池を使用するシステムに比べるとかなり安価に導入可能だという。さらに、長い利用実績を持つ機器を組み合わせているため、信頼性も高いとしている。
Siemens Gamesaは今回建設する設備が完成し、試運転が終了したら、ハンブルグの電力会社であるHamburg Energieに、この設備で作り出した電力を供給するとしている。