九電みらいエナジーは2018年2月23日、鹿児島県指宿市で建設中だったバイナリー発電所「山川(やまがわ)バイナリー発電所」の営業運転を開始した。親会社である九州電力が所有する地熱発電所「山川発電所」の敷地内で2016年8月から建設を進めていたものだ。
図 「山川バイナリー発電所」の外観
出所 九電みらいエナジー
地熱発電所では地下深いところから取り出した高温の蒸気と熱水のうち、蒸気でタービンを回して発電し、熱水は地中へ戻す。山川バイナリー発電所では、地中へ戻す熱水(還元熱水)で沸点が低い媒体(今回はペンタン)を熱して蒸発させ、その蒸気でタービンを回して発電する。還元熱水は九州電力から供給を受ける。
図 山川バイナリー発電所では山川発電所から還元熱水の供給を受けている。供給を受けた還元熱水を汽水分離器で水分と蒸気に分離し、蒸気でペンタンを熱する。熱したペンタンは低温で蒸気となり、タービンを回して電気を発生させる
出所 九電みらいエナジー
山川バイナリー発電所の最大出力は4.99MW(4990kW)。資源エネルギー庁の地熱発電に関する研究会によると、地熱発電の設備利用率は70%ほど。この数字をそのまま当てはめると、年間発電量は約30.598GW(3059万8680kW)となる。設備利用率が高いため、出力が同程度の太陽光発電所や風力発電所に比べて発電量が大きい。
九州電力は2015年4月に発表した「九州電力グループ中期経営方針」で、グループで国内外に地熱発電所の開発を進め、地熱による発電出力を2030年までに800MW(80万kW)上乗せするという目標を公表している。
中期経営方針発表の時点で九州電力グループが地熱発電所の出力合計値はおよそ208MW(20万7960kW)だった。その後インドネシアのサルーラで大規模な地熱発電所の開発を始め(参考記事)、大分県玖珠郡九重町で地熱資源の調査を開始するなど、大手電力会社の中では地熱資源開発に最も積極的だ(参考記事)。ちなみにサルーラでは100MW(10万kW)、九重町では数MW級(数千kW)の出力を期待しているという。