≪1≫姿を現わしたIMT-Advanced(4G)と、商用向けWiMAX、実用化目前のLTE(3.9G)
〔1〕IMT-Advanced(4G)の実証実験:KDDI研究所
株式会社KDDI研究所では、最大で1Gbps程度の移動通信が可能なIMT-Advancedのテストベッドと実証実験の様子を展示した(写真1)。実験は100MHz帯域幅での伝送が可能な実験装置を電測車に搭載し、横須賀リサーチパーク(YRK)を中心としたエリアを、移動しながら行ったもの。電測車の車内では、各種実験データの収集やIPアプリケーションの使用が可能だ。実験は、フェージング(※)・シミュレータやノイズ発生器を使って、ノイズなどを加えた100MHz帯域幅の信号を、固定基地局から発信し、移動基地局でとらえ、信号の状態を測定する。また、逆に移動基地局からノイズなどを加えた40MHz帯域幅の信号を発信し、固定基地局で信号を測定して行った。会場では、実際のデータをキャプチャした動画で再現していた。この実験で、特徴的なのは、KDDIのOFDM技術「Rotational OFDM」が使われていることだ。この技術は信号を複数チャネルに分散して送信することで、いくつかのチャネルの信号品質が悪くても、受信側で正確なデータに復元できる技術である。
※フェージング:Fading。電波が壁などの障害物に反射して空間で合成された結果、電波が強くなったり弱くなったりして、受信レベルが変動すること
〔2〕IMT-Advanced(4G)への取り組みとMIMO実装の高性能LSI:NTTグループ
NTTグループでは、広域ユビキタス・ネットワークや、400MHz~3GHzの周波数の信号受信に対応し、W-CDMAやGSM、無線LAN、WiMAXなど1つの機器で複数の通信方式に対応できる「マルチバンドRF IC」などを展示した。特に、LTE(3.9G)およびIMT-Advanced(4G)への取り組みの様子は大いに注目を集め、プレゼン映像の前から人だかりは絶えなかった(写真2)。また、NTTドコモでは、2008年2月末に行われたLTEや4Gの実証実験の結果が掲示され、4×4のMIMO伝送を使った屋外実験で、下り250Mbps、上り50Mbpsが出た結果などが掲示されていた。
その中で目を引いたのが、MIMO(※)チップである。LTEや4Gで使われるMIMOは、複雑な処理が必要で演算量が多いため、必要な機能を備え、端末に搭載できるだけの小型チップができるかどうかが課題となっていた。NTTドコモでは、このMIMOチップの試作品を展示(写真3)。サイズは8.4×4.2mm、消費電力として79.2mW(1.1V)、最大出力として200Mbpsの伝送速度を実現できたという。MIMOの信号処理に特化はしているが、端末に載せられるだけのサイズのものを作れるという実現の可能性が示された。
※MIMO:Multiple Input Multiple Output、マイモ。送信側と受信側の双方に複数のアンテナを設置し、データを分割して同時に(並列的に)双受信することによって、伝送容量を上昇させる技術
〔3〕LTEの商用基地局やモバイルWiMAXなど:NEC
NECは、LTEやモバイルWiMAX、そして複雑な電波状況が立体的にシミュレートされ表示されるシステムを展示した(写真4)。
「Interactive Wireless Network Design」は、新しく無線基地局を設置するような場合、設置する無線局の影響をその場で簡単にシミュレートし、運用状況を確認できるシステム。3次元マップ上で電波状況を視覚的に確認できるため、高層ビル街など2次元の表示では分かりにくい複雑な電波状況を一目で把握することができる。
また、LTEについては、商用の小型基地局「eNodeB」(写真5)を展示。商用化に向けた具体的なロードマップも掲示された(写真6)。