マイナンバー制度とは
マイナンバー制度は、過去のグリーンカード(納税者番号制度)や住民基本台帳番号(住基番号)の流れをくむ施策で、国民一人ひとりに一意の番号(ID)を割り当て、納税や社会保障、行政サービスを効率化することを目的としている。図1のマイナンバー制度のイメージに示すように、マイナンバーをキーに各省庁や組織(将来的には企業)が個人情報を管理するわけではない。税と社会保障について本人確認を省庁間で確実に、効率よく行うことを第一義に考えられている。
図1 マイナンバー制度のイメージ
その一方で、マイナンバー制度をめぐっては、「政府による国民監視」「収入がガラス張りになる」といった声が示すように、人権やプライバシーにかかわる問題から、悪用によるセキュリティ問題、企業や事業主の管理コストまで、さまざまな議論も沸き起こっている。そして、セキュリティ業界、システム・ソリューションベンダは、マイナンバー特需とばかりにさまざまな提案を企業に行っている。
マイナンバー制度における企業の課題
マイナンバー制度において、現在多くの企業にとって一番の課題は、従業員の所得税徴収、厚生年金や健康保険の事務処理にマイナンバーが必要となり、従業員から提示された番号の決められた管理方法などに対応しなければならないことだろう。多数の従業員を抱える企業にとっては、既存システムを含めた改修が必要かもしれない。
加えて、管理が不十分でマイナンバーを漏えいさせた場合、企業側に罰則規定が盛り込まれており、個人情報保護法のように、事業規模や件数による例外規定がない点も問題に拍車をかけている。
制度のスケジュールと必要となる対応
〔1〕個人番号の通知は2015年10月から
では、企業は具体的にいつまでに何をしなければならないのだろうか。制度全体のスケジュールを図2に示した。
図2 マイナンバー制度導入のスケジュール
マイナポータル:個人が、行政機関がマイナンバーの付いた自分の情報をいつ、どことやり取りしたのか確認できるほか、行政機関が保有する自分に関する情報や行政機関から自分に対しての必要なお知らせなどを、自宅のパソコンなどから確認できるシステムのこと。2017年1月より利用可能になる予定。
〔出所 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/download/jigyou_siryou.pdfの8ページ〕
現在は、2015年10月からの制度開始の準備期間である。10月に制度がスタートすると、国民に各自の番号を通知する「個人番号通知カード」注1の郵送が始まり、事業者は、従業員の番号取得が可能になる。
個人番号カード注2(希望者)の交付が始まる2016年1月から、その年の税務処理からマイナンバーが利用される(社会保険や健康保険は2017年から使用)。そのため、2015年10月以降、事業者は、年内に従業員および必要な配偶者、扶養家族などの番号を集める必要があるが、本当に番号が必要になるのは税務署に提出する書類の申請時だ。
実際の問題としては、まず2015年10月からの番号通知が正しく全国民に送付が行われるかが懸念されている。送付は住民票を基準に行われるが、転居のタイミングや実体のない住民票の存在、(DVや犯罪などの)事情によって住民票を移動できない人など、さまざまな状況が想定される。また、事業者が番号を取得する場合も、本人確認(特に家族)をどうするかといった問題もある。
〔2〕企業が対応すべきポイント
ポイントだけまとめると、企業は2015年10月から従業員のマイナンバーが収集可能になるので、10月以降、自社の2016年の税務処理業務に合わせて必要な情報を収集して、申告処理に利用する。いつまでに情報が揃っていなければならないかは、各社の業務規定やシステムによって決まる。
収集にあたっての注意事項などは、内閣府のマイナンバー制度のホームページ注3に各種のガイドラインやFAQが公開されている。ガイドラインには、細かい作業方法までは記載されていない。逆に言えば、本人確認や収集方法、管理方法は、ガイドラインの記載事項をクリアしていればどのような方法でも構わない。