容量市場とは
〔1〕kW価値とkWh価値の違い
容量市場の「容量」とは、電気を発電する能力のことである。例えば「100万kWの火力発電所」という場合の「発電能力」100万kWのことを指し、「kW」という単位が使用される。この容量は、容量市場で「kW価値」として取引される。
容量市場の管理・運営は、広域機関(OCCTO)が行う。
一方、100万kWの火力発電の「電力量」は、例えば1時間(1hour)発電した場合は100万kWh(100万kW×1hour)と表され、「kWh」という単位を使用する。この電力量は、卸電力市場で「kWh価値」として取引される。
卸電力市場の管理・運営は、日本卸電力取引所(JEPX)が行う注2。
図1に、小売電気事業者と発電事業者、卸電力市場、容量市場の関係を示す。
図1 「容量市場/卸電力市場」と「小売電気事業者/発電事業者」の関係と役割
出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」、2020年9月14日
〔2〕100万kW発電所は短期間にできない
今後、日本の電力市場を見通して発電所をつくる場合、例えば、100万kW規模の火力発電所は1、2年などの短期間には建設できないため、実際に電力が必要となる4年前に予測して、全国的にその電力供給力を確保しなければならない。
すなわち、容量市場とは、将来にわたって電源不足にならないように、日本全体の電力の供給力(kW)を効率的に確保する市場のことである。このような背景から、今回の第1回オークションは、対象実需給年度となる2024年度の4年前の2020年度に行われたのである。
この容量市場が確保する電力供給量によって、電気の価格を安定化でき、小売電気事業者は安定した経営ができるようになる。さらに、電気料金の安定化が、電気を使用する需要家にもメリットをもたらすことになる。
容量市場初の第1回オークション結果
広域機関は、このほど2020年度から開設された容量市場の第1回オークションを2020年7月1日〜7日に行い、その落札結果を発表した。
落札結果は、表1、図2に示すように、
表1 2020年度実施 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2024年度)の約定結果(オークション入札期間 2020年7月1日~7日)
約定(やくじょう):電力の売買において取引が成立すること
出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」(2020年9月14日)をもとに編集部で作成
図2 2020年度メインオークション需要曲線(指標価格、目標調達量等)
※目標調達量は、FIT電源等の期待容量の合計を含む。
出所 電力広域的運営推進機関、「2020年度メインオークション需要曲線」、2020年6月3日
- 約定総容量(全国)は、目標調達量の1億7,747万kWよりも978万kW少ない、1億6,769万kWとなった。
- 約定価格は、全エリアで上限価格の1万4,138円/kWよりも1円安い、1万4,137円/kWとなった。
- 経過措置を踏まえた約定総額は、1兆5,987億円(約1.6兆円)となった。
表2に、全国約定の結果(約定総容量、約定総額)と北海道から九州までのエリアごとの約定価格と約定容量、約定総額の詳細を示す。
表2 2020年度実施 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2024年度)の約定結果(約定総容量、約定価格、約定総額)
出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」、2020年9月14日
また表3に、今回のオークション結果から、一般送配電事業者や小売電気事業者が負担する容量拠出金(試算)を示す。
表3 一般送配電事業者・小売電気事業者が負担する容量拠出金(試算)
(注)四捨五入の関係で合計が合わないことがある。
H3需要:供給計画における各エリアの各月最大3日平均電力
出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」、2020年9月14日
一般送配電事業者は、1,336.9億円、小売電気事業者は14,650.5億円と、高額な負担となる。