エネルギー政策の動向をまとめた「エネルギー白書2024」
経済産業省は、日本のエネルギー政策の動向をまとめた「令和6年度エネルギーに関する年次報告」(以下、エネルギー白書2024)を2025年6月13日に発表した。白書では、グリーントランスフォーメーション(以下、GX)と2050年カーボンニュートラル関連の取り組みを重要項目の1つとして取り上げている。同日に閣議決定された。
安全保障、電力需要増など変化するエネルギー情勢
エネルギー白書2024によれば、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化が、化石燃料の調達に関する不確実性を高めており、エネルギー安全保障の重要性が改めて浮き彫りになっている。しかし、日本は、エネルギー自給率が2023年度時点で15.3%とG7参加国の中で最も低水準であり、エネルギー調達に課題を抱えている(図1)。
図1 各国のエネルギー自給率・化石燃料の割合
出所 経済産業省 プレスリリース 2025年6月13日、「2024年版エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が閣議決定されました」
さらに、日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を背景にしたデータセンターや半導体工場の増設、電化を前提とするGXの進展により、電力需要の増加が見込まれている。2024年度時点で8059億kWhの電力需要は、2034年度には8524億kWhになると試算している(図2)。それに見合う脱炭素電源の確保が、日本の経済成長や産業競争力を左右する状況にある。
図2 日本における電力需要の推移
出所 経済産業省 プレスリリース 2025年6月13日、「2024年版エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が閣議決定されました」
同時に、世界では多くの国・地域がカーボンニュートラル目標を表明している。日本は、温室効果ガスの排出量を2013年度比で2035年度に60%、2040年度に73%削減するという、2050年ネット・ゼロの実現に向けた野心的な目標を2025年2月に決定した。
2023年度の日本における温室効果ガスの排出・吸収量は、2013年度比で27.1%減の約10億1700万トン(CO2換算)であり、排出量を算定している1990年度以降で過去最低値を記録した。2050年目標に向け減少傾向を継続しているという。しかし、この状況はエネルギーを多量に消費する製造業の生産減退が一因となっており、2050年目標の達成に向けて予断を許さない状況が続く。
図3 日本における温室効果ガス排出・吸収量の実績と目標
出所 経済産業省 プレスリリース 2025年6月13日、「2024年版エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が閣議決定されました」
また、脱炭素に伴うエネルギー需給構造の転換を経済成長に結びつけようとする動きが世界で広がっており、さまざまな国がエネルギーと産業を一体化した政策を打ち出している。
エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の実現に向け進むGXの取り組み
このようにエネルギー情勢が変化する中で、政府はエネルギーの安定供給、経済成長、脱炭素を同時に実現するため、2024年2月に「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定し、それとともに「GX2040ビジョン」や「地球温暖化対策計画」の検討を進めた。
GXについては、「GX実現に向けた基本方針」を2023年2月に策定して以降、10年間で20兆円規模の先行投資支援策や成長志向型カーボンプライシング構想を実行し、2025年2月にGX2040ビジョンを策定した。
GX2040ビジョンは、GX投資の予見可能性を高めるため、その中長期的な方向性を官民で共有するためのもの。取り組みの1つとして、AI(人工知能)技術の普及とともに需要が拡大するデータセンターの誘致を進めるため、電力(ワット)と通信(ビット)にインフラの整備を通じ、電力と通信の効率的な連携を進めるアプローチ「ワット・ビット連携」が示された。
また、白書では、2050年カーボンニュートラルを実現するためには、次世代エネルギー技術の商用化が不可欠とする。主な次世代エネルギー技術として、光電融合技術、ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力発電、次世代型地熱発電、次世代革新炉、水素の動向を挙げる。
参考サイト
経済産業省 プレスリリース 2025年6月13日、「「2024年版エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が閣議決定されました」