≪6≫今後の展開への期待:NGNからNWGNへ
〔1〕次世代サービス共創フォーラムのスタート
日本のNGNは、今スタートしたばかりであり、現在は、必ずしもNGNが本来備えている可能性を十分活用しているとは言いがたいところがあります。
そこで、今後、NGNで多彩なサービスを提供できるようにするため、2007年11月9日の記者会見では、NTTの三浦社長から、NGN上における新ビジネスを共同で創出するフォーラム「次世代サービス共創フォーラム」の構想が打ち出されました。
この次世代サービス共創フォーラムは、IT業界にとどまらず、さまざまな分野・組織・業種に携わる人々が共に取り組み、共に創造するという"共創"のコンセプトに基づいたオープンなビジネスフォーラムの性格をもっています。このフォーラムは、2008年3月31日の商用サービスと同時に設立され(2年間継続)、参加への募集が開始されました(http://www.ngs-forum.jp/)。
具体的には、フォーラム幹事会社(NTT、NTT東日本、NTT西日本)と参加者とによって、NGNなどを活用したサービスの開発や事業化の共創をその目的としており、NGNによる新しいビジネス・モデルを作り上げていく重要な組織と位置づけられています。
〔2〕「次世代サービス共創フォーラム」はNGNの生命線
歴史的に見ると、電話サービスや放送サービスは、基本的には事業者提供型のサービスであり、インターネットの場合はこれとは逆の、ユーザー参加型(草の根的)です。すでに証明されているように、ユーザー参加型のインターネット・モデルでは、Web2.0(ブログ、SNS、マッシュアップ、CGM等々)のような柔軟なサービスを次々に誕生させ、その裾野を大きく広げ、新しい可能性や市場を創り出してきました。
そこで、NGNが、電話網やインターネットの「いいとこどり」をしたネットワークであるならば、「次世代サービス共創フォーラム」の運営とそこから生まれてくる多彩なサービスこそが、その生命線になります。したがって、このようなフォーラムを成功させることによって、通信産業が、「利用時間に応じた課金」「距離に応じた課金」「伝送速度に応じた課金」を基本にした従来の古典的なビジネス・モデルから脱却し、「多彩なサービスに対して課金する」新しいビジネス・モデルに転換でき、大きな市場を創造できると期待されています。
NGNは、今後、解決すべきいくつかの課題をもちながらも、通信と放送とITを融合する重要な要となろうとしています。さらに、現在NGNは、リリース1からリリース2へと進化している真っ最中です。その先には、本格的なユビキタス社会の実現を目指して、NWGN(新世代ネットワーク)のプロジェクトが、すでに世界の各国で一斉に動き出し、国際連携のもとに活発な研究開発が行われています。2015年頃には、その具体的な姿が見えてくるといわれており、大きな期待が寄せられています。
参考までに表2に、締めくくりとして、日本でNGN商用サービス開始に至るまでの経緯と関連サイトを掲載しました。
年 月 | 内 容 |
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2004年6月9日 | BT(ブリティシュ・テレコム)、NGNの構築を核とした21CN(21st Century Network。21世紀ネットワーク計画)を発表 〔http://www.btplc.com/21CN/WhatisBTsaying/index.htm〕 |
2004年11月10日 | NTT、「NTTグループ中期経営戦略」を発表 〔①NGN、②FMC、③IP電話/光アクセス(FTTH)への移行等を明確化〕 〔http://www.ntt.co.jp/news/news04/0411/041110d.html〕 |
2005年6月15日 | KDDI、次世代通信インフラ「ウルトラ3G」(固定移動統合網、FMBCの提供基盤)の構築を発表 〔http://www.kddi.com/corporate/news_release/2005/0615/index.html〕 〔関連サイト http://www.kddi.com/corporate/kddi/rinen/fmc/rd.html〕 |
2006年7月21日 | NTT、NGNフィールドトライアルのインタフェース条件の開示と参加受付開始〔①NNI、②UNI、③SNIの3つのインタフェース〕 〔http://www.ntt-east.co.jp/release/0607/060721b.html〕 |
2006年11月28日 | BT、21CN計画に基づき世界で初めて、既存の電話回線をNGNに移行させIP電話サービスなどを開始〔英国:南ウェールズ地方のカーディフ近郊のウィック(Wick)村)〕 〔http://www.btplc.com/News/Articles/Showarticle.cfm?ArticleID=90018709-f48e-409a-a1e4-9b49fd423335〕 〔http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20070821/454〕 |
2006年12月20日 | NTT、NGNのフィールドトライアルを開始(約1年間) 〔①東京(大手町)、②大阪(梅田)にショールーム「NOTE」を開設〕 〔http://www.ntt-east.co.jp/release/0612/061220a.html〕 |
2007年4月27日 | NGNのフィールドトライアルのモニターへのサービス提供開始 〔①一般モニター約500名、②社員モニター約70名(1月から開始)〕 〔http://www.ntt-east.co.jp/release/0704/070427a.html〕 |
2007年10月25日 | 総務大臣に、NGNを利用した商用サービスに関する活用業務の認可申請(NTT東日本/NTT西日本) 〔http://www.ntt-east.co.jp/release/0710/071025b.html〕 |
2007年10月25日 | NTT、「NGNのフィールドトライアル実施報告書」を発表 〔http://www.ntt.co.jp/news/news07/0710/071025a.html〕 |
2007年11月9日 | NTT三浦社長、「次世代サービス共創フォーラム」(NGN上における新ビジネスを共同で創出するフォーラム)設立構想を発表 〔2008年3月末に運用開始が予定されている「フォーラムWebサイト」から参加申込みが可能となる〕 〔http://www.ntt.co.jp/news/news07/0711zrmh/bqyt071109d_05.html〕 〔http://www.ngs-forum.jp/〕 |
2007年12月25日 | NTT、NGNにおけるインタフェース資料等の技術的な情報を開示 〔http://www.ntt-east.co.jp/ngn/business/index.html〕 |
2007年12月25日 | NGNのフィールドトライアル終了 |
2008年2月25日 | 総務省、NTT東日本/西日本が2007年10月に申請したNGNに関する業務に対し認可を発表 〔http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080225_3.html〕 |
2008年2月27日 | NTT東日本/西日本、「NGN商用サービスの提供に向けた検討状況」を発表 〔http://www.ntt-east.co.jp/release/0802/080227a.html〕 〔http://www.ntt-west.co.jp/news/0802/080227a.html〕 |
2008年3月28日 | NTT、「NGN商用サービス「フレッツ 光ネクスト」等の提供開始について」 を発表 〔http://www.ntt-west.co.jp/news/0803/080328a.html〕 |
2008年3月31日 | NTT、NGNリリース1に基づいた世界初のNGN商用サービスの提供を開始(NTT東日本/西日本:東京・神奈川・千葉・埼玉/大阪の一部地域から) |
表2 NGNに関する主な動向とNTTのNGN商用サービス提供までの概略史
※ 用語解説
NGN-GSI:NGN Global Standards Initiative、ITU-Tにおいて、NGNの標準化に関する課題を検討するSG(研究委員会)の合同会合
FMBC:Fixed Mobile and Broadcast Convergence、固定通信と移動通信の統合および通信と放送の連携(サービス)
NNI:Network-Network Interface、網間インタフェース。ネットワーク(NGN)と他の通信事業者網(例:ISP等)の接続点
UNI:User-Network Interface、ユーザー・網インタフェース。ユーザー端末とネットワーク(NGN)の接続点
SNI:Application-Server Network Interface、アプリケーションサーバー・網インタフェース。アプリケーション・サーバ(AS)とネットワーク(NGN)の接続点
NOTE:NGN Open Trial Exhibition、NGNトライアルのショールームの名称
最後になりましたが、このほどTTC(情報通信技術委員会)の井上友二理事長を監修者として、編者、コーディネータ、そして 多くの執筆者の皆様のご協力を得て、NGN標準を徹底解説した『NGN教科書』を2008年3月31日の翌日の4月1日に出版いたしました。ここに、ご尽力いただいた関係者の皆様に厚く御礼申し上げますとともに、多くの方々にぜひご一読いただけましたら幸いです。
また、当WBB Forum/NGN Forumでは、NGNなどに関する標準化の動向や、各社のNGN戦略などを次々に掲載しています。あわせてごらんいただけましたら幸いです。
2008年4月1日