[スペシャルインタビュー]

東芝のスマートグリッド国際戦略≪前編≫

― エネルギー産業の再編と新ビジネスモデルの展開―
2015/01/01
(木)

スマートグリッドを実現する中核技術:AMIソリューション

─編集部:スマートメーターを中心にした東芝のビジネス戦略のイメージを、もう少し具体的にお話いただけますか。 

横田:詳しい解説は省略しますが、図4に東芝グループのスマートメーター通信基盤(AMIトータルソリューション)の構成を示します。図4の左から、

  1. 一般家庭(HEMS:エネルギー管理システム)
  2. スマートメーター(双方向通信機能を備えたデジタル電力計)
  3. メーターネットワーク(AMI)注4
  4. ヘッドエンドシステム(HES)注5
  5. メーターデータ管理システム(MDMS)注6
  6. 周辺システム注7

などで構成されています。

図4 東芝グループのスマートメーター通信基盤(AMIトータルソリューション)の構成

図4 東芝グループのスマートメーター通信基盤(AMIトータルソリューション)の構成

〔1〕主流となる国際標準規格を採用

横田:また、これらの各システムは、図5に示すように、システム全体で国際標準規格を採用しています。これに加えて、当社が直接標準化活動に参加した知見を生かして、多くの競合規格の中から、今後主流となる規格を選択して採用しています。

図5 国際標準規格を全面的に採用

図5 国際標準規格を全面的に採用

 さらに、国際標準に準拠しているため相互接続性が確保されており、世界のどの国にも輸出することが可能です。また、標準品を採用するため調達コストも低減でき、多彩なアプリケーションの構築が可能となります。

〔2〕スマートメーターを基軸にした新しい世界

 経済産業省では、今後スマートメーターを基軸にした新たなスマートグリッドビジネスを展開するうえで重要となる、「Aルート」「Bルート」「Cルート」の3つのルートを制定し、これらのルートを用いて電力量使用情報などに基づいて、各種の制御やサービスが可能な基本構成を推進しています。

 図6は、各家庭から取得される電力量の使用情報は、需要家との契約を前提にして、

  1. Aルート経由で電力会社と、
  2. Bルート経由で需要家(家庭)と、
  3. Cルート経由で事業者(電力の小売事業者/第三者の民間事業者)と、

情報が共有されて制御され、サービスなどが提供される姿を示します。

図6 「Aルート」「Bルート」「Cルート」による電力使用情報に基づく制御の構成

図6 「Aルート」「Bルート」「Cルート」による電力使用情報に基づく制御の構成


▼ 注4
AMI:Advanced Metering Infrastructure、スマートメーター(検針)通信基盤。

▼ 注5
HES:Head End System、ヘッドエンド装置。一般家庭からの電力消費量などのデータ収集および通信制御を行う装置。

▼ 注6
MDMS:Meter Data Ma-nagement System、メーターデータ管理システム。一般家庭などの需要家からスマートメーター経由で収集した電力消費状況などのデータ(HESのデータ)を管理(収集・蓄積・分析)し、他の情報システム(周辺システム)とも連携して処理を行う電力会社側のデータ管理システム(サーバ)。

▼ 注7
周辺システム:顧客情報管理(CIS)、料金計算・課金管理などを行うシステム。

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