[スペシャルインタビュー]

東芝のスマートグリッド国際戦略≪前編≫

― エネルギー産業の再編と新ビジネスモデルの展開―
2015/01/01
(木)

スマートメーター通信基盤(AMI)の全体像とスマートグリッドに関する5レイヤモデル

〔1〕スマートメーター通信基盤(AMI)

─編集部:東芝が現在構築しているスマートメーター通信システムについて、簡単に整理していただけますか。

横田:図7は、前出の図4に示したスマートメーター通信基盤(AMI)におけるネットワークの全体像を示したものです。

図7 スマートメーター通信システム:ネットワークの全体像 (2014年4月から東京・小平市ほかに導入開始。現在展開中)

図7 スマートメーター通信システム:ネットワークの全体像 (2014年4月から東京・小平市ほかに導入開始。現在展開中)

 Aルート(FANルート)には、無線マルチホップ方式(IEEE 802.15.4シリーズ)、携帯1:N無線方式(3G/LTE方式)、PLC方式(ITU-T G.9903)の3方式を採用しています。

 Bルート(図8参照)には、まず、スマートメーターとHEMS間に家電/住宅設備の国際標準制御プロトコル「ECHONET Lite」を採用し、相互接続性を実現しました。また、Bルートの通信方式として、920MHz帯無線(主方式)を使用する「Wi-SUN IP方式」(IEEE 802.15.4g/4e)と、「PLC」(電力線通信)〔ITU-T G.9903(G3-PLC)〕の2つが採用されています。

図8 Bルート:2つの通信方式とECHONET Lite(標準制御プロトコル)

図8 Bルート:2つの通信方式とECHONET Lite(標準制御プロトコル)

 Cルートには、広域網(WAN)として、有線の光回線や無線の3G/LTE回線などが使用されています。

〔2〕スマートグリッドを実現する5レイヤモデル

横田:「Aルート」「Bルート」「Cルート」の3ルートを整理するためにまとめたものが、図9と表1に示すスマートグリッドに関する5レイヤモデルです。

  1. 新しいサービスビジネスは、マーケットレイヤ(市場層)とデバイスレイヤ(機器層)で規定されます。
  2. AMIソリューションは、システム制御層(HES/MDMS)とサイバー層(FAN)、制御層(スマートメーター計量部)の3つの層で規定されます。

図9 スマートグリッドを実現する5レイヤモデル

図9 スマートグリッドを実現する5レイヤモデル

表1 スマートグリッドサービス/ソリューション

表1 スマートグリッドサービス/ソリューション

 これらが図6に示した「Aルート」「Bルート」「Cルート」と対応して、新しいスマートグリッドによるサービスビジネスを創出していくのです。(後編に続く)

◎Profile

〓

横田 岳志(よこた たけし)

株式会社東芝 執行役上席常務 社会インフラシステム社 社長

1982年(昭和57年)3月 横浜国立大学工学部電気工学科修士課程修了
1982年(昭和57年)4月 株式会社東芝入社
1999年(平成11年)4月 電力事業部電力変電技術部長
2008年(平成20年)4月 電力流通システム技師長
2011年(平成23年)2月 電力流通システム技師長 兼 太陽光発電システム事業推進統括部長
2011年(平成23年)4月 電力流通システム事業部長
2011年(平成23年)6月 執行役常務(社会インフラシステム社電力流通システム事業部長)
2014年(平成26年)6月 執行役上席常務(社会インフラシステム社 社長)

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