〔2〕コルサ・ネットワークによるFPGA搭載OpenFlow スイッチ
また、ホップ・バイ・ホップ(すべてのネットワーク機器がSDN対応している状態)のためのSDN装置に関して、昨年(2014年)のONSから若干の進展があった。
カナダのベンチャー企業コルサ・テクノロジー(Corsa Technology)社は、FPGA(Field-Programmable Gate Array、製造後にユーザーが構成を設定できる集積回路)をコアプロセッサとして搭載したOpenFlow〔ONF(Open Networking Foundation)が標準化を進めているSDNを実現するためのプロトコル〕のスイッチを発表した注7。
展示に投入された新型機Corsa DP6430 & DP6440は、物理構成は2×100GbEもしくは4×100GbEのポート構成となり、ポート数は少ないものの、通信事業者(いわゆるキャリアグレード)のWAN(Wide Area Network、広域通信網)に対応した製品として位置付けられる(写真8)。
写真8 Corsa DP6440
〔出所 コルサ・ネットワークサイトより、http://www.corsa.com/products/〕
デモンストレーション可能な動態での展示がなかったため、実際の挙動を確認することができなかったが、その仕様から推察するに100Gbps回線によるバックボーンネットワークにおけるOpenFlowの制御を可能とするために、ぎりぎりまでポート数を絞った用途限定のモデルと思われる。
〔3〕リアヴァによる日本発のOpenFlowスイッチ
このほかに、展示会場では目新しいSDN装置はなかったものの、2014年のONSでは実際に動いている状態で展示されていなかったリアヴァ(Riava)社が、日本発のOpenFlowスイッチとして、同じくFPGAをコアプロセッサにした新型スイッチ「RG5800」を発表していた注8。
同スイッチは、24×1GbEと2×10GbEポートという物理構成で、OpenFlow1.3.4の仕様を満たし、16段のマルチテーブル注9を柔軟な設定構成で組むことができるという新機軸で発表されている。
16段のマルチテーブルの挙動は、すべてのテーブルに制限なくフロー注10の設定が可能となり、柔軟性の高いコンフィグレーション(設定)が可能となるデモンストレーションを実施していた。既存のOpenFlowスイッチが、1段から4段程度を組むのが限界で、実運用上の制限が厳しく、導入されなかったということを考えると、画期的な製品となるだろう。
2014年から2015年にかけては、従来のブロードコムなどのネットワークプロセッサベンダから新機軸のSDNに対応し得る製品のリリースがなかったために、コルサ・テクノロジーとリアヴァ以外には、ブロードコムの製品などを活用した新しいSDN装置はアナウンスがなかった。ブロードコムからは、十分な性能のSDN製品を作ることができる次世代のプロセッサについて2014年からアナウンスがあるため、2015年度の後半に期待がかかるところだ。
▼注8
http://www.riava.net/jp/product.php
▼注9
マルチテーブル:SDNでは、パケットの宛先/送信元などの基本的なパケット転送情報だけでなく、特別な条件によってパケットの取り扱いを規定することを可能とするわけだが、その条件設定を設定し参照される対象としてのデータベースを「テーブル」と称する。このテーブルを、複数に分けて設計・設定しうるものをマルチテーブルという。
▼注10
フローとは、データの「流れ」のことを指す。