[特集]

川崎市スマートシティプロジェクトの全貌 ≪前編≫ ―ビジネス実証のフェーズに入った市民参加型の小杉駅周辺地区実証事業―

2015/09/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

小杉駅周辺地区スマートコミュニティ事業の概要

 ここでは、特に2014年7月から実施されている小杉駅周辺地区のスマートコミュニティ事業について、その実証内容を見ていく。

 都市型住宅が集積する小杉駅周辺を含む中原区は、前出の図1に見られるように、川崎市の中でも人口の推移が近年特に高い。これらの特徴を踏まえ、エネルギーを無駄なく効率よく利用する新しい暮らしの形としてのスマートライフスタイルの普及と低炭素社会への貢献、暮らしの利便性の向上などをめざして、持続可能なビジネスモデル構築に向けた市民参加型の実証事業に取り組んでいる。

 同実証事業は、株式会社大和総研ビジネス・イノベーション(以下、大和総研BI)が実証事業者となり、2014(平成26)〜2015(平成27)年度の2年間で実施している。

〔1〕実証の内容

 この実証は、HEMSを単なる電力の見える化の機器としてとらえるのではなく、住民と事業者をつなぐコミュニケーションツールととらえ、節電行動の普及に取り組むとともに、各種サービス提供事業者がサービスや地域の情報などを提供することで、生活の快適性や利便性も向上させながら持続可能なビジネスモデルの可能性を検証していく(図3、表4)。

図3 小杉駅周辺地区スマートコミュニティ事業のしくみ

図3 小杉駅周辺地区スマートコミュニティ事業のしくみ

〔出所 「小杉駅周辺地区 スマートコミュニティ事業案内」より〕

表4 小杉駅周辺地区スマートコミュニティ事業での展開サービス

表4 小杉駅周辺地区スマートコミュニティ事業での展開サービス

〔出所 株式会社大和総研ビジネス・イノベーション資料より〕

〔2〕市民モニターの募集

 実証は、事業に参加する住民(以下、市民モニター)を募集し、国際標準であるIEEE 1888注7に準拠した共通システム基盤を構築したうえで、家庭の消費電力などを管理するシステム(HEMS)と連携させて実施している(図4)。家庭内から各機器データは、分電盤(最大16分岐)経由で30分値で収集され、ゲートウェイを通じてHEMS提供事業者側のクラウドを経由して大和総研BI側に転送される。収集側(HEMS提供事業者)はIEEE 1888に対応していないが、大和総研BI側でIEEE 1888に対応したデータに変換し、クラウドへ格納している。

図4 実証内容のシステム構成

図4 実証内容のシステム構成

〔出所 株式会社大和総研ビジネス・イノベーション 資料より、2015(平成27)年7月〕

 市民モニターの参加要件は、

  1. 市民モニターが契約するインターネット回線が利用可能なこと
  2. サービスを利用するためのPCやタブレット、スマートフォンを用意可能なこと
  3. 2年間の実証事業に協力可能なこと
  4. エネルギー消費などのデータを(実証事業者に)提供可能なこと
  5. 実証に必要となる情報提供などが可能なこと
  6. 実証に関連するアンケートへの協力が可能なことなどが必要となる注8

▼ 注7
これにより、複数事業者の多様なデータを一元的に取り扱うことが可能となる。IEEE 1888は次世代BEMSやスマートグリッド向けに開発され、2011年に国際標準化されたオープンな通信規格(正式名称はUGCCNet:Ubiquitous Green Community Control Network)

▼ 注8
HEMS機器未設置世帯については実証事業にて設置。

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