2014年度の取り組み実績と2015年度の取り組み内容、実証事業終了後のビジネス展開
〔1〕2014年度の取り組み実績
2014年度(2014年4月〜2015年3月)は、主に実証環境の整備と一部サービスの提供を実施した。ポータルサイト「なかはらロジーちゃんねる」(写真1)を開設して市民モニター向けサービスの提供をスタートした。具体的な提供サービスは、次の通りであった。
写真1 ポータルサイト「なかはらロジーちゃんねる」のトップ画面
- エネルギー関連:電力見える化
- 生活関連:エコ家電レンタル、家事支援
- 地域関連:行政情報配信、地域情報配信
そのほか、2015年1月24日〜2月28日にウォームシェア注9を目的とした「お出かけでお得」と題した「法政通り商店街とのスタンプラリー」を開催し、同時に「小杉スマートアクションポイント」を開始(写真2)した。
写真2 お出かけでお得!!ロジーちゃんスタンプカード
その結果、2014年度の成果は次の通りであった。
- 市民モニターの参加状況:139世帯が参加。
- 提供サービスの利用状況:実施期間が短く市民モニターへの浸透が低く課題を残した。また、提供サービス数も少なく、ビジネス創出のためには更なるサービスの拡充と工夫が必要。
- 節電行動の普及:「お出かけでお得」の実施は、まだまだイベントへの参加世帯数は少ないものの、イベント参加時に該当世帯の消費電力が少なくなっていることが確認され、ウォームシェアを通じた節電行動の普及に一定の効果があった。
- 電力使用状況の分析:市民モニターの電力消費動向を分析。世帯ごとの電力消費動向にはばらつきがあるものの、今後、節電への取り組みなどへの連携が期待できるデータ分析を実施できた(写真3)。
写真3 1日の時間別電力利用量を分析した家庭ごとの省エネアドバイスの例
〔出所 慶応義塾大学 西研究室提供資料より〕
〔2〕2015 年度の取り組み内容
2015年度(2015年4月〜2016年3月)は、2014年度実証からの継続したサービスを中心とした環境整備を実施し、ビジネス実証へとつながるサービスを拡充し、市民モニターの利用促進を図っていく。その中で、前出の表4のような重点サービスの拡充を図る。
さらに、ビジネス検証のための取り組みも行っていく。まず、サービス提供事業者注10と連携して、市民モニター向けサービス提供のビジネス検証を実施する。また、サービス料金などを想定した形で検証を行うほか注11、サービス提供事業者における電力使用量データの二次利用の可能性についても、今後検討を行うとしている。
〔3〕今後の展開
大和総研BIでは、2015年度末までに、電力小売ビジネス注12などの事業モデルの中でHEMS活用(設置)を推進し、住民との接点を広げていくことで、地域に特化したポータルサイトを活用したビジネスモデルの検証を進めている。
その実証結果をもとに、HEMSを活用したビジネスの可能性を継続して検討していく(図5)。
図5 事業構成イメージ
〔出所 株式会社大和総研ビジネス・イノベーション 資料より、2015(平成27)年7月〕
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川崎市では、今後ともスマートシティ推進方針に基づき、さまざまな取り組みを推進していくこととしている。
スマートシティの実現に向けたモデル事業の推進が、2016年4月1日から開始される電力小売全面自由化以降、住民が価値を見出せる魅力的なサービスの創出につながり、地域活性化の促進のキッカケとなるのか、今後の実証結果に注目していきたい。
(後編につづく)
▼ 注9
家庭などにおいて、一人ひとりが暖房を使うのではなく、同じ場所や部屋に集まることによって暖房エネルギーを節約すること。
▼ 注10
対象は、地元商店街の各店舗、および生活関連/地域関連/エネルギー関連のサービス提供事業者など。
▼ 注11
実証段階によるサービス料金の徴収に関しては、サービス提供事業者と協議のうえ決定する。
▼ 注12
電力小売ビジネス:2016年4月1日以降、電力事業への参入規制が緩和され、さまざまな事業者が電力を小売販売できるようになる。小売事業の事前の登録申請は、2015年8月3日から開始されている。