[特集]

川崎市スマートシティプロジェクトの全貌 ≪前編≫ ―ビジネス実証のフェーズに入った市民参加型の小杉駅周辺地区実証事業―

2015/09/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

エネルギー分野の取り組みの方向性

 ここでは、特にエネルギー分野についての取り組みについて見ていく。

 川崎市のエネルギー分野についての取り組みの方向性は、

  1. 創エネ・省エネ・蓄エネの総合的な推進
  2. 地域特性に応じたエネルギーマネージメントの推進
  3. 電力需給の安定化に適した分散型電源の導入、推進

などである。

 その主な取り組みの例は以下の通りで、スマート化を先導するモデル事業を通じて技術的なノウハウを蓄積し検証するとともに、費用対効果なども考慮しながら効率的で効果的な事業展開を図るとしている(図2)。

図2 スマートシティの実現に向けたモデル事業の推進

図2 スマートシティの実現に向けたモデル事業の推進

〔出所 「川崎におけるスマートシティの取組」資料より、2015(平成27)年6月29日〕

①創エネ、省エネ、蓄エネを組み合わせた総合的な取り組みの推進に向けた啓発効果の高い公共施設への環境配慮技術の率先導入を進めるとともに、市および事業者向け導入支援策を実施。

②エネルギーの高密度消費を伴う川崎駅周辺のビル群において、統合BEMS注4を活用し、エネルギーの見える化によるエネルギー利用合理化の意識向上と省エネ・節電行動の誘発を検証。また、省エネルギー対策との組み合わせによって需要家メリットを生み出す建物内コミュニティづくり実証事業を2013年度から実施(株式会社東芝などと連携)

③都市型住宅が集積する小杉駅周辺における低炭素社会への貢献および暮らしの利便性の向上等をめざし、HEMS注5等を活用し、エネルギー使用量の見える化による省エネ行動等を促す実証事業を2014年度から実施。

④持続可能な社会の構築に貢献するサスティナブル・スマートスクール注6をめざし、ゼロエネルギー化の実現や地域の防災拠点としてエネルギーの持続可能性を確保する次世代小学校を、新川崎地区で計画中。

⑤水素のエネルギー利用の推進と高度化・高付加価値化をめざし、新たな水素の大量貯蔵・輸送技術を活用した臨海部水素ネットワークの構築(千代田化工建設株式会社などと連携)。

左から順に、川崎市 藤巻氏、弓田氏、慶應義塾大学 西教授、株式会社大和総研ビジネス・イノベーション(大和総研BI) 中谷氏、藪氏。プロジェクトの実施主体は川崎市、実証事業者は大和総研BI。慶應義塾大学(西研究室)は、プロジェクトのアドバイザーであり、大和総研BIの集積データの解析および研究開発に携わっている。

左から順に、川崎市 藤巻氏、弓田氏、慶應義塾大学 西教授、株式会社大和総研ビジネス・イノベーション(大和総研BI) 中谷氏、藪氏。プロジェクトの実施主体は川崎市、実証事業者は大和総研BI。慶應義塾大学(西研究室)は、プロジェクトのアドバイザーであり、大和総研BIの集積データの解析および研究開発に携わっている。


▼ 注4
統合BEMS:BEMS(ビルディング・エネルギー・マネージメント・システム)は、ビルの機器・設備などの運転管理によってエネルギー消費量の削減を図るためのシステム。統合BEMSは、都市機能が集積する地域において、複数の施設のBEMSを接続することで、エネルギーを連携、一括管理することができる統合型のビル向けエネルギー管理システムをいう。

▼ 注5
HEMS: ホーム・エネルギー・マネージメント・システム。家庭における電力の消費や発電・蓄電設備などをリアルタイムで統合的に管理し、快適さを保ちつつ節電を行う家庭向けエネルギー管理システム。

▼ 注6
サスティナブル・スマートスクール: 持続可能な社会の構築への貢献をめざし、ゼロエネルギー化*1の実現や、エコマテリアル*2の積極採用などにより、環境負荷の低減や自然との共生など環境に配慮した学校のこと。
*1 ゼロエネルギー化:「省エネ」と「創エネ」などの技術を組み合わせて、年間のエネルギー消費を実質上ゼロとする考え方。
*2 エコマテリアル:優れた特性や機能をもちながら、より少ない環境負荷で製造、使用、リサイクルまたは廃棄でき、しかも人に優しい材料のこと。

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