[特集]

川崎市スマートシティプロジェクトの全貌 ≪前編≫ ―ビジネス実証のフェーズに入った市民参加型の小杉駅周辺地区実証事業―

2015/09/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

川崎市スマートシティ推進方針の概要

 ここで、川崎市がめざすスマートシティの推進に向けた基本的な考え方と取り組みについて見ていく。

〔1〕なぜスマートシティなのか:その背景

 同市がスマートシティへの取り組みを推進する背景には、次のような社会を取り巻く状況があった。

(1)2011年3月11日に発生した東日本大震災は、川崎市においても、計画停電によるエネルギー供給が滞るなどの状況も発生した。この結果、市民生活や経済活動に不可欠なエネルギーの安定供給やエネルギー基盤の重要性を再認識したなかで、エネルギーは市民生活を支える重要な基盤であることから、その安定供給や無駄のない使用には、これまで以上に包括的かつ分野横断的な検討が求められていること。

(2)国内において、少子・高齢化が進行するなか、高度経済成長期に整備された道路や橋梁をはじめとする公共施設の更新時期が到来するなど、ハードあるいはソフト両面からの社会基盤の再構築が必要となっていること。

(3)さらに、現在、インターネットやスマートフォンなどのICTが人々の生活に浸透し、技術革新が進められていることから、今後、誰もが暮らしやすい生活環境づくりを進めるためには、特にこのICTを活用し、生活のさまざまな局面で、適時適切なサービスを利用できる取り組みをさらに促進することが求められていること。

 以上のような状況を踏まえて、川崎市では持続可能な社会を作り上げる新たなまちづくりの方策として、「エネルギーの最適利用」と「ICT・データの利活用」の2つの側面から、地域課題の解決を図ることを通じてスマートシティの推進をめざしている。

〔2〕スマートシティ推進に向けた5つの課題

 同市では、スマートシティ推進に向けた課題を大きく次の5つに整理している。

【課題1:エネルギー】
地域特性に応じた安定的かつ自立的なエネルギーマネージメントシステムが必要

【課題2:生活】
少子・高齢化社会を見据えた誰もが暮らしやすい生活環境の整備が必要

【課題3:交通】
環境負荷の小さい交通(例:電気自動車)へのシフトや安全・安心で快適な地域交通環境の整備が必要

【課題4:まちづくり】
防災・減災注3機能の強化やしなやかで機能的なまちづくりが必要

【課題5:産業】
川崎市の発展を支える産業の振興と国際競争力の強化が必要

 これら5つの課題を解決するため、表3に示す5分野においてスマートシティの取り組みを推進している。これを進めるにあたっては、「環境・持続可能性」「安全・安心」「地域活力」「快適性・利便性」の4つの視点をもって各分野で取り組まれている。

表3 5分野におけるスマートシティの取り組み事例

表3 5分野におけるスマートシティの取り組み事例

〔出所 「川崎におけるスマートシティの取組」資料より、2015(平成27)年6月29日〕


▼ 注1
http://www.city.kawasaki.jp/templates/press/200/0000066093.html

▼ 注2
2015(平成27)年8月1日現在。

▼ 注3
減災:2次災害の最小化、混乱の回避、情報の円滑な流通。

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