トラブル回避策とスイッチング支援システムの開発
─編集部:広域機関における特徴的な役割として、そのほかに何かありますか。
〔1〕ルールの策定
金本:送配電業務の実施に関する基本的な指針である送配電等業務指針を定めました。来年(2016年)4月に施行されるライセンス制等の環境変化にあわせ、これらルールの整備を行っていきます。
〔2〕2つの委員会
金本:先に設備形成計画の策定について詳しくお話しましたが、広域機関内に2つの委員会を立ち上げ、重要な検討を行っています。1つは、先に挙げた「広域系統整備委員会」ですが、もう1つは、「調整力等に関する委員会」。ここでは、今後の環境変化を踏まえた、調整力として確保する量および連系線に確保するマージンの量に関する考え方も検討しています。
〔3〕ダブルトラック方式によるトラブル回避
金本:新電力も含めた発電事業者が送電線を使用する際に、これまでは、発電事業者自身が送電線の所有者である電力会社に申し込み、その電力会社が送電線を利用できる(接続できる)かどうかの技術的検討を行い、回答をしてきました。
この2015年4月からは、広域機関に接続検討の申し込みをすることも可能となりました(ダブルトラック方式)。
〔4〕スイッチング支援システムの開発
金本:また、来年(2016年)4月からスタートする電力の小売全面自由化ですが、これが実施されると、例えば、一般家庭などの需要家が電気の購入先を変更する場合、需要家はこれまで使用していた小売電気事業者Aとの契約を廃止して、小売電気事業者Bと新たに契約します。小売電気事業者Bは、小売電気事業者Aの接続を切り新たに自社と接続するために、配電網を管理する一般送配電事業者と調整することが必要となります。
このような複雑で面倒な手続きが必要になるのですが、このような面倒な処理を行わなくても済むような切換えシステム(スイッチング支援システム)を、2016年3月の稼働を目指して開発を進めています(図5)。小売電気事業者、送配電事業者間の契約変更の手続きがシステム上で処理できることからスムーズに切り換えが行われます。
図5 スイッチング支援システムの構成
出所 電力広域的運営推進機関の資料より
〔5〕紛争解決のための紛争解決室も設置
金本:そのほか、電力小売全面自由化に伴って新たに事業者間のもめごとなどの発生が予測されますが、公平な電力ネットワークの利用環境を整備するため、紛争解決サービス業務として、苦情対応や相談対応、あっせん・調停なども行います。あっせん・調停の際は、各種の専門家によって構成される「紛争解決パネル」(紛争解決委員会)が設置されます。すでにADR注4認証を取得しています。
▼ 注4
ADR:Alternative Dispute Resolution、裁判外の紛争解決手続