[特集]

電力小売全面自由化に向けて「広域機関」が本格稼働へ ― 電力広域的運営推進機関(OCCTO)理事長 金本良嗣氏に聞く!―

特集 パート2 スペシャルインタビュー
2015/10/30
(金)
SmartGridニューズレター編集部

広域機関の具体的な活動内容

Yoshitsugu Kanemoto

─編集部:現在、広域機関では、どのような具体的な取り組みが行われているのでしょうか。

金本:現在、電力システムの広域的な運用の視点から「広域系統の長期方針および広域連系系統の整備に関する個別計画の策定」に取り組んでいます。

 また、「電力系統の基幹部分の管理」と「連系線の運用管理」も行っています。

〔1〕電力系統の基幹部分の管理

金本:電力系統の基幹部分の管理において上位2電圧ともいわれる送電電圧が「50万Vと27万5,000V」の超高電圧の送電線投資(設備形成)についてプロセスの管理を行い、推進しています。

 具体的には、上位2電圧について「どこに、だれが、いつ、どのような送電線をつくるべきか」などの検討を行います。27万5,000Vよりも低い電圧の送電線については、現在の10電力会社各社(送電部門)が担当することになっています。

〔2〕連系線の運用管理

金本:また、電力会社の供給エリア間を結んで電力の相互融通を行う連系線〔送電電圧:27万5,000V以上。図3の赤線で示す送電設備〕の運用管理も行います。電力会社などがこれらの連系線を使って送電する場合は、広域機関に届ける必要があります。

図3 広域機関(OCCTO)と電力会社の関係および連系線の役割

図3 広域機関(OCCTO)と電力会社の関係および連系線の役割

出所 電力広域的運営推進機関の資料より

 このように、連系線の管理は広域機関によって行われ、それ以外の各地域内の送電線(基幹網)の部分は、各電力会社(現在は10電力会社)が管理することになっています。また、その連系線の所有者は、電力会社〔一部はJ-POWER(電源開発)〕になっています。

〔3〕新たに2カ所で整備計画の検討を開始

金本:広域機関には、「広域系統整備委員会」が設置注3されており、先に述べた「広域系統に関する長期方針の検討」や、計画策定プロセスに基づいて、次に説明するような東北東京間連系線や東京中部間連系設備の新たな2件に関する「広域系統整備計画の検討」が開始されています。

─編集部:東北東京間連系線、東京中部間連系設備に関する「広域系統整備計画の検討」について、具体的に教えていただけますか。

(1)東北東京間連系線の増強(500万kW ⇒ 1,120万kW)

金本:現在、東北電力エリアと東京電力エリアを結ぶ連系線による送電可能な電力容量は、500万kWですが、広域機関ではこれを1,120万kWに増強する方向で検討が進んでいます。その工期は、2023〜2027年程度を目標としています。

 この連系線増強に向けて広域機関では、この区間の連系線の利用を拡大しようとする電気供給事業者について発電規模などの募集を行いました。その結果、16社から527.7万kW(21発電所)もの応募があったため、これらを参考にして東北東京間連系線の増強計画(総工費予算は1,590億円程度)を検討しています。

(2)東京中部間連系設備の増強(210万kW ⇒ 300万kW)

金本:日本では、東日本で50Hz、西日本で60Hzと、2つの周波数が異なる電気が存在していますが、両者が相互に電力融通ができるようにするため、FC(周波数変換装置)によって周波数変換(50Hz ⇒ 60Hz、または60Hz ⇒ 50Hz)が行われています。

 現在は、図4に示すように、新信濃FC:60万kW、佐久間FC:30万kW、東清水FC:30万kWの3カ所の計120万kWが東京中部間連系設備として稼働していますが、2011年3月11日に発生した東日本大震災時にその容量不足を指摘されたことがきっかけで、今後の大規模災害などに備えることも含め、急ピッチで増設を進めています。

図4 東京中部間連系設備の増強(210万kW ⇒ 300万kW)

図4 東京中部間連系設備の増強(210万kW ⇒ 300万kW)

出所 経済産業省 総合資源エネルギー調査会「地域間連系線の増強について」 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_jukyu/pdf/009_06_00.pdf

 具体的には、2020年末までに新信濃FCをさらに90万kW増強して「120万kW ⇒ 210万kW」にします。これに加えて2020年代後半を目途に、さらに佐久間FCに30万kW、東清水FCに60万kWの計90万kWを増強し、「210万kW ⇒ 300万kW」にする計画を検討中です。その工期は10年程度で、総工費予算は1,750億円程度となっています。

 これらの計画が実現されれば、災害時にも50Hzエリアと60Hzエリアの電力融通の容量が拡大すると期待されています。


▼ 注3
広域系統整備委員会:2015年6月に成立した電力、ガス、熱供給を一体的に改革する電気事業法等改正法(改正電気事業法)に基づいて設立された。この改正電気事業法は、(0)全体像、(1)電気事業法の一部改正、(2)ガス事業法の一部改正、(3)熱供給事業法の一部改正、(4)経済産業省設置法等の一部改正(電力・ガス取引監視等委員会の設立)の構成となっている。

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