すべての電力会社の発電計画もチェック
─編集部:ずいぶんきめ細かい準備や対応がされているのですね。ところで、電力の全国的な発電計画などは、今後どのように策定されるようになるのでしょうか。
金本:電力の供給計画については、これまでは10年分の計画を国(経済産業省)に対して一般電気事業者(10社)が提出してきました。今年度からは、広域機関の業務の1つに「供給計画のとりまとめ」があり、すべての電気事業者(新電力を含む)からの供給計画をとりまとめ、国に送付することになっています。
供給計画は、今後10年の計画である長期計画を含め毎年度提出されるものですが、そのほかにも、1年、1カ月、1週間、1日と細かいレベルまでの計画と需要予測も毎日の需給監視のために出してもらっています。
各種ルールが決められている「送配電業務指針等のポイント」(資源エネルギー庁認可)に照らして、相互融通や同時同量などを含め、電力の安定供給が行われます。これらの発電計画に関する情報は、市場取引にも利用されるため、一部日本卸電力取引所も連携して活用します。
2015年末には、本拠地となる新豊洲(東京都江東区)のオフィスに引越が決まっています。小売自由化に対応していくこと、調整力の当面の整理、2つの連系線についても具体案を決める、2030年までの長期方針の策定、災害対策のシステム、まだまだやならければならないことが山積しています。
─編集部:ありがとうございました。
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電力小売全面自由化に向けて、広域機関では、新電力の育成や対応なども含めたきめ細かい対応がなされ、電力システムの強化や災害に対する取り組みなどが強化されていることが印象的であった。
自由化が先行して実施されている欧米では、日本の広域機関と同じような役割をもつ、米国のNERC注5や、欧州のENTSO-E注6などの機関が活躍している。
これらの機関と日本の広域機関の詳しい違いは別の機会に譲るとして、電力会社に指示できる権限をもつなどの特徴のある日本の広域機関が、今後、電力小売全面自由化に向けてどのように日本の電力システム改革をリードしていくか、大きな期待を寄せるとともに注目していきたい。
(特集パート3に続く)
▼ 注5
NERC:ナーク。North American Electric Reliability Corporation、北米電力信頼度協会。米国の基幹系統の信頼度評価のために設立された機関。
▼ 注6
ENTSO-E:エントソ・イー。European Network of Transmission System Operators for Electricity、欧州のTSO(Transmission System Operator、送電事業者)間の協調を図るため送電事業者の団体として設立された機関。