[特集]

― グリーンファイナンス推進機構 代表理事 末吉竹二郎氏に聞く! ―歴史的なパラダイムの大転換! COP21の「パリ協定」 グリーンビジネス/グリーン産業時代へ突入

2015/12/26
(土)
SmartGridニューズレター編集部

グリーンビジネス/グリーン産業を生み、育てるための金融が始まった:グリーン・インベストメント・バンクの登場

〔1〕グリーンファイナンス推進機構とは?

─編集部:グリーンファイナンス推進機構について教えてください。

末吉:「地球温暖化対策のための税」という、化石燃料の消費に応じて税金をかける仕組みがあります。今はガソリン1リットルにつき50銭だと思いますが、段階的に最大70銭まで上がるはずで、その場合は年間2,600億円の税収になるそうです。この税金の使い道はCO2削減に限るとされていて、経産省と環境省が予算を組んでいるのですが、そのごく一部が、環境省から私たち(グリーンファイナンス推進機構、表1)が推進するプロジェクトに出ています。2015年は総額で46億円ほどです。

表1 一般社団法人グリーンファイナンス推進機構のプロフィール

表1 一般社団法人グリーンファイナンス推進機構のプロフィール

出所 一般社団法人グリーンファイナンス推進機資料より編集部が作成

 私たちに課された任務は、CO2を減らすと同時に地域を元気にするプロジェクトに出資する、というものです。

 日本政府が税金を使って小さなプロジェクト、それも民間の事業に投資するというのは極めて異例です。グリーンファンドなら草の根の小さなプロジェクトにもお金を出せる。それも補助金ではなく出資ですから、投資判断をして、株主として留まり、そのプロジェクトの動きをウォッチしていくのです。

 これは、地域が元気になるようなプロジェクトに支援してほしいということで、大正解だと思います。

─編集部:とても興味深いですね。具体的にはどのような案件があるのでしょう。

末吉:2013〜2014年度までに16件の出資決定案件があります(表2)。

表2 グリーンファンドの出資決定案件〔平成25〜26(2013〜2014)年度案件〕

表2 グリーンファンドの出資決定案件〔平成25〜26(2013〜2014)年度案件〕

出所 一般社団法人グリーンファイナンス推進機資料より一部加筆修正して編集部が作成

 2015年に決めた投資案件ですと、新潟県の市民が出資する、地域の人たちによる太陽光発電プロジェクトがあります。市の公共施設の屋根や屋上などを借りて太陽光パネルを置き、自分たちが使う電力を発電する。地産地消ですね。そのプロジェクトにお金を出すという、これは世界でも珍しい試みです。私は2014年のOECDでも、2015年のCOP21でもこの話をしましたが、たいへん興味をもっていただいています。

 そのほか、出資を求める方法としては、当機関のホームページをはじめ、いろいろなルートのアプローチがあります。これはというプロジェクト案件があればどんどんもってきてほしいですね。現在も百数十の案件を検討していますが、少額のものから多額のものまでさまざまケースがあります。

〔2〕グリーン・インベストメント・バンクとは?

─編集部:世界にもこうした出資機構は多いのでしょうか?

末吉:私たちのような金融機関を、世界では「グリーン・インベストメント・バンク(GIB)」と呼び始めています。英国のUKGIBという機関が始まりで、世界で最も大きいGIBです。税金が38億ポンド(約8千億円)も投入され、精力的に投資活動を行っています。私もUKGIBの頭取とお会いして、覚書を結んで協力しようと言ってきましたが、向こうは巨人で私たちはまだ小さいですから(笑)。

 それから、米国のニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、あるいはカリフォルニアなどの各州が自分たちのGIBを作り始めています。自分たちの経済をクリーン・アンド・グリーンにしたいと。こうした金融機関は、今、世界で13あるそうです。グリーンビジネス/グリーン産業を生み、育てていくための金融が始まったと言えるでしょう。それを専門に行う金融機関が生まれ、そこが軸になって民間投資を呼び込んでいく。私たちの場合も、国からの1億円の出資に対して7億円くらいの民間の資金が集まって、投資が行われています。民間投資を呼び込む起爆剤として公的資金が使われるようになってきているのです。時代が変わりましたね。

─編集部:公的資金の場合、意思決定までの時間や手続きの複雑さが問題となりそうですが。

末吉:先にも申しましたが、設立から1年半ですでに17件のプロジェクトを行ってきています。2016年も10件は実現すると思いますので、なかなかのスピードだと思っています。

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