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ニュースで学ぶSG最新事情-[第2回]携帯料金の「複雑さ」と競い合う、電力の新料金プラン

2016/01月分---プレスリリース情報から読み解く
2016/02/22
(月)
中山洋一(なかやま よういち) テクニカルライター

自分でプランを選んでみたら、以前より電気代が高くなった!?

 できるだけ多くの家庭が新料金に移行していくように、各社のプレスリリースでは、モデルケースがいくつか紹介されていて、新料金プランに移行すれば、いとも簡単に電気料金を節約できるようになるという印象を受けるようなセールストークが並んでいる。例えば、東京電力の場合、図1のようなモデルケースを紹介している。

 図1 東京電力が提示しているモデルケース

出所:東京電力プレスリリースより、東京電力エナジーパートナー株式会社の資料「新しいサービスメニューについて」より抜粋
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu16_j/images1/160107j0102.pdf

 このモデルケースでは、従量電灯B、契約電流40A、1月あたりの平均使用量が400kWhの家庭の場合、1年間で約1,000円ほどお得になるとアピールしている。このモデルケースのように、筆者宅でもお得になるかを確認するため、2015年12月分の電気料金を使って新料金を試算してみることにした。

 我が家は東京電力エリア内にあるので、まずWebサイトの「でんき家計簿」にアクセスし、「電気料金領収済みのお知らせ」ページを開いて、契約種別、契約電流、使用量、領収金額を確認した。東京電力の場合、10~60A(アンペア)までの契約は「従量電灯B、それ以上のアンペア数の契約は「従量電灯C」となる。我が家は50Aなので「従量電灯B」になる。12月の電気使用量は603kWh、請求金額は17,401円だった(図2)。

 図2 2015年12月の我が家の「でんき家計簿」

出所:東京電力「でんき家計簿」にて実施

 一方、東京電力から今回新たに発表された料金プランでは、単身~ファミリーの幅広いユーザー向けにスタンダードプラン(S、L、Xの3タイプ)が用意されている(図3)。このうちスタンダードSは60Aまで契約できるので、我が家はこのプランが適当ではないかと判断した。いずれのスタンダードプランも時間帯による単価の差はなく、使用量に応じた二段階料金体系となっている(図4)。

 図3 単身~ファミリーの幅広いユーザー向けにスタンダードプラン

出所:東京電力プレスリリースより、東京電力エナジーパートナー株式会社の資料「新しいサービスメニューについて」より抜粋
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu16_j/images1/160107j0102.pdf

 

 図4 スタンダードSの単価一覧(税込み)

出所:東京電力資料「新しい料金プラン概要」より抜粋
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu16_j/images1/160107j0101.pdf

 早速、図4に示されている単価を使って、12月分の電気代を算出してみた。その結果は次のとおり。

300kWh×23.4円(最初の300kWh)+303kW×30.02円(300kWhを超過した分)+280.8円×5(50Aの基本料金)
=7,020円+9096.06円+1,404円
17,520円

 一方、従来の契約による請求額は17,401円だったので、両者の差額は、

 (新)17,520-(旧)17,401=+119円

となり、新料金プランに移行すると電気代は安くなるどころか、逆に約119円値上がりしてしまった。

 何か計算違いをしているかも知れないと思い、念のため、最近登場し始めた電気料金比較サイトでも確認してみることにした。ここでは、料金比較サイトの老舗である「価格.com」の電気料金比較サイトを利用して確認してみた。すると、やはり図5のように、従来の従量電灯Bから新料金プランのスタンダードSに移行すると、割高になることを示していた。
 この比較サイトでは、実質費用14,627円/月平均となり、1月分だけを比較したら安くなったということになるが、同サイトでは、これを1年間の節約額に換算してから比較している。その結果、525円割高になると判定している。

 図5 「価格.com」の電気料金比較サイト

出所:「価格.com」の電気料金比較サイト にて実施。「料金詳細」

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