WoTとは
〔1〕Webのオープン標準技術を使ってIoTを実現
WoTとは、Web of Things(モノのWeb)の略で、Webのオープン標準技術を使って
IoT注1を実現するという概念である。W3C注2のWeb of Things Interest Group注3(WoT検討グループ)で検討が行われている。
IoTは、企業、業界、コンソーシアムやアライアンスの中に閉じた相互接続を目指すことが多いため、システムがサイロ化注4する傾向がある。W3Cは、IoTが商業的に成功し普及するために、Webのオープン標準技術を使うことを提唱している。
Webのオープン標準技術とは、例えば、インターネット上のリソース(資源)の識別子であるURI、スクリプト言語注5であるJavaScript、データやメタデータ注6の記述フォーマットであるJSON、通信プロトコルのHTTP/ HTTPSとWebSocket、APIの設計原則であるRESTなどのことだ(表1)。
表1 Webのオープン標準技術に関する用語解説
出所 各種資料をもとに著者作成
〔2〕IoTプラットフォームの相互接続を可能にするグローバルデータバス
センサーやスマートフォンなどのIoTデバイスを相互接続できるようにする「IoTプラットフォーム」は、プラットフォームごとに、消費電力やハードウェア性能、ネットワーク帯域、セキュリティなどの要件が異なるので、採用されるプロトコルも多種多様になることが多い。
WoTの考え方に基づけば、レイヤ1〜レイヤ6のプロトコルの差異はゲートウェイ(相互接続装置)などによって吸収することができるので、多種多様なプロトコルを採用してもよいが、レイヤ7(アプリケーションレイヤ)はWebのオープン標準技術を採用することが必要である。WoTを採用すると、図1のように複数のIoTプラットフォームを相互接続することが可能になる。
W3Cは、IoTプラットフォームの相互接続を可能にするWoTの役割のことを「グローバルデータバス」(プラットフォームを越えてデータをやり取りするバスという意味)と表現している。
図1 WoTによって可能となる、異なるIoTプラットフォームの相互接続
出所 著者作成
▼ 注1
IoT:Internet of Things、モノのインターネット。人ではなくセンサーなどのモノが発する情報を、インターネットで接続されたモノ(IoTデバイス)同士がやり取りする技術。
▼ 注2
W3C:World Wide Web Consortiumの略。 World Wide Web、すなわちWebで使用される各種技術の標準化団体。
▼ 注3
Web of Things Interest Group:Web of Thingsについて議論を行う部会。Working Groupが仕様策定を目的とし、参加資格も会員企業などに限定されているのに対し、Interest Groupは特に成果物の定義はなく、会員企業ではなくても参加できる。
▼ 注4
サイロ化:サイロとは飼料や穀物の貯蔵庫のことで、「窓がなく周囲が見えない」という意味がある。そこから転じて、システムが外部と連携できずに孤立している様を表す。
▼ 注5
スクリプト言語:ソースコードの記述や実行を簡易に行うことができる言語の総称。ソースコードを機械語に変換することなく、インタプリタで逐次解釈しながら実行できるので、実行までの手間がかからない。
▼ 注6
メタデータ:データそのものではなく、データに関する付随的な情報。作成日時、更新日時、作成者、更新者、ファイル名、ファイルサイズなど。