スマートグリッド時代を迎えて、A ルートにAMIが新しいインフラネットワークとして登場している。またスマートメーターから宅内、ビル内にデータを提供するB ルートについても、その先に既に日常的に使用しているインターネットなどのC ルートがあることから、顧客サービスの展開がいよいよ現実味をおびてきた。そこでスマートメーターを中心とした視点から、どのようにサービスが展開できるのか。また、どのような製品を市場が必要としているか。今回はゲートウェイ/コンセントレータ機能を紹介し、OpenADR をはじめ、SEP 2.0 やECHONET Lite の実装も含めた最新動向にも触れる。
電力を制御するネットワーク
〔1〕3つのネットワーク構成
スマートグリッド時代を迎えて、新たに図1の上部に示すように、電力会社と家庭(消費者)間に、家庭からの消費電力量を収集したり課金したり、デマンドレスポンス(電力の需要制御)などを行ったりする目的で、スマートメーター通信用の通信基盤網としてAMIという新しい双方向通信ネットワークが注目されている。
図1 スマートグリッド時代の3つのネットワーク構成
〔出所 合田忠弘・諸住哲監修、「スマートグリッド教科書」、インプレスジャパン刊、2011年3月〕
従来、日本の電力会社では、基本的に電力会社独自のネットワークとして、図1の下部に示すように、
l電力を需要家(利用者)に送る送電網や配電網などの電力ネットワーク
l電力会社の各種設備の監視・制御などに使用しているクローズドな通信用ネットワーク
を運用してきた。このため、今後電力会社では、図1に示すように、基本的な3つのネットワーク()で構成されることになる。
〔2〕AMIの役割
従来の電力用通信ネットワークは、電力会社の事業所や大規模な需要家までを結んでいたが、AMIは家庭までを結ぶ非常に広範囲のネットワークとなる。このため、いかに効率良く構成するかが課題である。このときAMIが果たす役割としては、以下のものがある。
- 家庭のスマートメーターからの電力量使用情報を電力会社が受信し、MDMS注2で処理。
- 真夏時などにおいて電力使用量がピークを迎えたときに、消費者(家庭)側の負荷(家電機器や照明・エアコン)を抑制してもらうよう要請(デマンドレスポンス、電力の需給制御)。
AMIに対する電力会社の認識
この新しいAMI(スマートメーター通信基盤)は、スマートグリッドを実現するうえで重要な要素であり、現在大きくクローズアップされている。しかしその一方で、従来、社会的なインフラ事業を展開している電力会社は、電力を安定的に供給することに必要な電力ネットワークの基幹システム(ベストエフォートではなくギャランティを基本的な考えとしてもつ)の運用、保守対応を行ってきた。
例えば、「発電所の発電電力と需要家側の需要電力」を一致させるための制御ひとつをとってみても、長い経験の中でその時代の新技術を、「導入」「改良」「保守」「トラブル対応」にさまざまな努力が払われてきた。
すなわち電力システムは、発電所をはじめ変電所や送電線、配電線などに加えて監視制御システムやセキュリティなどの保守技術が密接に連携し、冗長性をもたせた注3絶対に止まらない総合的なシステムと言える。そういった電力システムの中に、現在、AMIを活用して制御する部分が新たに発生したとしても、それは巨大で複雑な電力システム全体の中に次元の異なる「新しい制御システム」が取り入れられ、今後、既存システムとの兼ね合いも含めて検証も進めながら運用していくこととなる。目的は、再生可能エネルギーを積極的取り込み、かつ需要電力に尖塔的(一年の数時間のみの発生)なピークを作らないようにすることである。
スマートグリッド時代を迎えて、スマートグリッドが「電力システムと情報通信(ICT)が統合、融合したシステム」であるため、ICT系(システムの基本がベストエフォートと考える)の人たちから見ると「電力システムは理解しにくい」ものであり、逆に電力システム(システムとしてギャランティでなければならないと考える)の人たちにとっては「ICTは理解しにくい」ものとの認識があるが、新しいシステム(スマートグリッド)の構築に向けて協力し合うという機運が高まり、効率的で合理的な社会システムの構築が図られることが期待できる。
▼ 注1
AMI:Advanced Metering Infrastructure、スマートメーター通信基盤。
▼ 注2
MDMS:Meter Data Management System、検針データ管理システム。
▼ 注3
バックアップをもたせること。
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