今後の展開:JJ300.10/JJ300.11そして東京電力の運用へ
ここまで、スマートグリッドに関連する高速PLC/低速PLCに関する日米欧の標準規格の最新動向を概観してきた。
次に、これらの動向に同期した日本の動きを見てみよう。
日本では、先に述べたような動きを背景に、
- TTC JJ-300.10:ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース(IEEE 802.15.4/4g/4e 920MHz帯無線)
- TTC JJ-300.11:ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース(ITU-T G.9903狭帯域OFDM PLC)
が2013年2月21日に制定されている注10。
このJJ300.11:G3-PLCと、前述したITU-T G.9903(G3-PLC規定)が連動する形となっている。すなわち、JJ300.11で規定した日本仕様の内容をG.9903に反映させた形である。
日本で、G3-PLCやPRIMEが注目されるようになったのは、
- G3-PLCは、国内のどの電力会社よりも規模が大きい欧州最大の電力会社であるEDFがすでにG3-PLCを実装したスマートメーターの実証実験を終え、小規模ながらも、実際の運用を開始していること。
- PRIMEは、スペインの大手電力会社であるイベルドローラがスマートメーターにPRIMEを実装したものを、相当数の規模で実運用を行っていること。
などが挙げられている。
ここで注意しておきたいこととして、G3-PLCの場合、前述したアダプテーション層にIETF標準の6LowPANプロトコルが採用されているのに対し、PRIMEでは独自仕様のプロトコルが使用されていることである。
現在、新しくIEEE P1901.2やITU-TのG.hnemなど高性能版の低速PLC標準ができ上がりつつあるものの、実運用に供されるまでには、まだ時間がかかるのではないかと思われる。このため、前述した「実装ガイドラインTR-1043」には、IEEE P1901.2やITU-TのG.hnemはリストアップされていない。
日本の電力事業者は、経済産業省が進めるJSCAが推奨する技術を参照しつつ、自分たちにとって最適なインフラ整備を行っていくものと思われる。この意味で、JSCAが基準として参照する、総務省と連携したTTCが策定するガイドラインの重要性は非常に高いものと考えられる。
現在、東京電力は、図3に示すように業者の資格審査を終え、2013年3月末にスマートメーターの通信機能に関する提案募集(RFP:Request For Proposal)を締め切った。その後、2013年4月に調達先業者を選定する予定となっている。
図3 東京電力の開発開始までのスケジュール
〔出所 東京電力、「スマートメーター運用管理システムRFP 募集要領」、2012年12月、http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/procure/rfc/pdf/e1_invit-j.pdf 〕
また今後、東京電力は、2015年からスマートメーターの導入や運用を開始し、2018年度までに約1700万台のスマートメーターを家庭等に集中導入する計画で、遅くとも2023年度までに全戸を対象に2700万台の配備を実現することとしている。
このような背景を踏まえると、有線/無線を問わず、また、高速PLC/低速PLCを問わず、新しいスマートグリッド向けインフラを構築するうえで、信頼性の高いスマートメーター用の通信技術は必須なのである。(終わり)
▼ 注10
http://www.ttc.or.jp/cgi/document-db/docdb.cgi?cmd=s&sc=T25