[期待高まる「洋上風力発電」とNEDOの戦略!]

期待高まる「洋上風力発電」とNEDOの戦略!≪後編≫ ―運転を開始した「銚子沖」と「北九州市沖」の徹底比較―

2013/10/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

なぜ日本海側と太平洋側で実証実験を行うのか?

次に日本の実証試験が、なぜ日本海側と太平洋側で実証実験を行うのかを見てみよう。

太平洋(銚子沖)ではうねり波の周期が長いため、大きな波が来る。これは台風は当初、赤道あたりで発生することが多いが、発生した段階からかなり波の影響が出てくる。その波の影響の具体的なものとして、「うねり」が出てくる。そうなると工事などが難しくなるというのが太平洋側である。かつ台風も結構多い。

日本海側の北九州市沖にも台風は来るが、北九州市沖では波の「うねり」というよりも「季節風」、あるいは「低気圧」などによる波というのが特徴である。

このように、波の違いもあるため、太平洋沖と北九州市沖の2カ所で実証研究を行っているというのが理由である。

また、風車にも落雷事故が多いが、日本海側では、冬季雷注3という雷が発生し、これは夏季の雷(夏季雷)に比べて100倍以上もエネルギーが大きい。これに対応するため、風車の羽根1個1個に避雷針が設置されているが、それでも雷のエネルギーが大きい場合は、羽が割れてしまうこともある。

銚子沖と北九州市沖・洋上風力の構造と特徴

〔1〕洋上風力の仕様と構造

次に、NEDOが開始した洋上風力発電の状況を少し詳しく見てみよう。

表2が、銚子沖と北九州市沖の実証実験の仕様である。銚子沖の場合は、離岸距離約3.1㎞、水深が約12mのところに建設されており、風車は三菱重工業製の2.4MWである。また、洋上風力の心臓部のナセル(風車の軸受け、増速器、発電機などを収納する格納部)は、実に119トン(北九州沖:125トン)もの重さがある。これは自動車の場合で見ると、普通車のセダンの場合は多くても1.5トン程度であるから、ナセルは普通車の約100台分の重さがあることになる。風力の3本のブレード(羽)は1本10トンもの重さとなっており、その風車の先端では最大で200㎞/時で高速回転している。

表2 銚子沖と北九州市沖の基本情報と洋上風車の仕様等

表2 銚子沖と北九州沖の基本情報と洋上風車の仕様等

〔出所 NEDO「洋上風力発電の取組について」、2013年7月16日〕

図3に千葉県・銚子沖、図4に福岡県・北九州市沖の洋上風況観測タワー(図4の左図)および洋上風車の構成を示す。

図3 千葉県・銚子沖の洋上風況観測タワー(左図)および洋上風車の概要

図3 千葉県・銚子沖の洋上風況観測タワー(左図)および洋上風車の概要

〔出所 http://www.nedo.go.jp/content/100518295.pdfhttp://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100180.html

さらに、図3の右の黄色い部分(重力式基礎:フラスコ型の形状)は5400トンもの重さがあり、洋上風力の「重し」にもなっている。

図4 福岡県・北九州市沖の洋上風車の概要(洋上風況観測タワーは銚子沖と同じ)

図4 福岡県・北九州沖の洋上風車の概要(洋上風況観測タワーは銚子沖と同じ)

〔出所 NEDO「北九州市沖 洋上風況観測システム実証研究及び洋上風力発電システム実証研究の経過」、平成25(2013)年6月27日、 http://www.nedo.go.jp/fuusha/doc/20130627_04.pdfhttp://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100209.html

なお、図3左側の観測タワーの高さは100mであるが、図3に示すように、10mごとにアームが取り付けられており、各アームには観測装置(風速計22基や風向計23基など)が設置され、風況の変化を見ている。

この(銚子沖の)風車を実際に建設したのは鹿島建設、風車の製造は三菱重工業で、風車と基礎の動的解析は東京大学が行い設計を行っている。なお、銚子沖も北九州市沖も海象計といわれる、海底の波向計とか流速計を測定する計測器を海中に沈めている。

〔2〕陸上風力は年平均6m/s、洋上風力は年平均7m/sが必要

陸上の場合、風は地上からの高さが30m、50m、90mと高くなるに従って風速の変化が大きいが、逆に洋上のほうは安定(10〜13m/s)しており、地上からの高さによる大きな差がない。

陸上風力で、風力発電のビジネスを行う場合の風速については、いろいろなデータの考え方があるが、最低でも年平均6m/sの風がひとつの目安として必要である。これに対して洋上風力の場合は、陸上に比べ風力発電の設置コストなどがかかっているので、年平均7m/s以上の風速が必要になる。

〔3〕具体的な風速と発電量の関係

図5は、銚子沖の風速と発電量を示している。例えばグラフから、次のようなことがわかる。

図5 銚子沖洋上風力の発電量と風速の関係

図5 銚子沖洋上風力の発電量と風速の関係

  1. 2013年5月10日の1日の平均風速は、3.3m/sしかなかったので2,015kWh の発電量であった。
  2. その翌日の2013年5月11日は、1日の平均風速が12.9m/s、発電量は54,206kWhであった。

風速は4倍になったが発電量は26.9倍にもなっているが、このことから、風速がいかに大事かということがわかる。ちなみに図5の右下に示すように、2013年5月の場合、平均風速が7m/sで、設備利用率が37%となり、太陽光発電の11%程度に比べて設備利用率が3倍以上になっていることがわかる。

今後は、年間での変化をデータにとって分析する計画である。


▼ 注3
冬季雷:冬季に日本海沿岸で多く発生する雷。世界的に日本の日本海沿岸とノルウェー西岸でのみ発生する。放電時間が長くエネルギーが非常に大きいのが特徴である。

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