IECにおける直流給電を標準化する具体的組織
〔1〕戦略グループの「SG4」で直流給電の標準化を推進
スマートグリッドやデータセンター、電気自動車の登場・普及とともに急速に注目を集めている直流(DC:Direct Current)給電は、IEC注1(国際電気標準会議)で活発な標準化の検討が行われている。同組織は、国連加盟国数195カ国のうち182カ国(2013年10現在)が参加している世界最大の電気・電子関連の国際標準組織である。
ここでは、図1に示すIECの概略的な組織構成を見ながら説明する注2。
図1 IECのSMBにおける低電圧直流(LVDC)給電(SG4)の位置づけ
〔出所 「SmartGridニューズレター」、インプレスビジネスメディア発行、2013年7月号。詳しい日本語の参考URL ⇒http://www.iecapc.jp/documents/gaiyou/2013_gaiyou_ippan.pdf〕
図のように、IECの下には標準管理評議会(SMB)注3があり、戦略グループ(SG)注4や専門委員会(TC)注5の設置や改廃、幹事国の割り当ておよび議長の任命、業務の調整などが行われている。
このSMBの下には、さらに、再生可能エネルギーや超高電圧技術(UHV注6、標準電圧:1,100kV)、スマートグリッド、直流1,500Vまでの低電圧直流(LVDC注7)配電システムなどの標準化を推進するために、表1に示す6つのSGや、図1に示す複数のTCが設置されている。
現在、この6つのSGのうち、直流給電を担当しているのは2009年に設置されたSG4で、ここでは直流1,500Vまでの低電圧直流(LVDC)配電システムの標準化が行われている。
〔2〕「システムアプローチ」のコンセプトを採用
とくに、表1に示す2007年から2011年にかけて設置された6つのSGは、IECにおける新しい戦略組織である。従来のTCでは、個々のTC〔あるいはその配下のSC(Sub committee)〕で個々の技術や製品単体についての標準化が行われてきたが、SGでは、「システムアプローチ」(System Approach)という新しいコンセプトを打ち出した。システムアプローチとは、個々の技術委員会で個別に議論するのではなくて、複数のTCにまたがって検討が必要な項目をアプリケーション全体の体系としてまとめ、TCやSC間の規定類の重複や漏れ、および矛盾の排除、システムとしてどのような課題や問題があるかを整理しながら標準化を推進することを基本としている。
表1 SMB下の6つSG(戦略グループ)と検討内容
〔3〕現在、直流が使用されている機器の例
図2 今日における直流応用例とその電圧範囲
現在、家庭やオフィスでは一般的に交流給電が主流となっているが、一方、産業界だけでなく、民生機器や家電機器の分野においては直流を用いる応用や機器は決して少なくない。例えば、今日における直流の応用例と代表的な電圧の範囲を見てみると、図2に示すようになる。
図2からわかるように、例えば、送電線は直流125〜500kV、地下鉄は直流1,500V、データセンターは直流100〜600V以下、航空・輸送機は直流270V、通信設備は直流48V、電気自動車の充電電圧は300〜400V程度、一般の自動車は直流42V/24V/12V、パソコンやデジカメなどの機器は直流12〜18V程度、半導体ICチップは直流1〜5V程度など、多数の機器が直流で稼働している。
▼ 注1
IEC:International Electro-technical Commission、国際電気標準会議、本部:スイス・ジュネーブ、1906年設立。
▼ 注2
IECの詳しい組織構成は次のURLを参照。
⇒ http://www.iecapc.jp/documents/gaiyou/2013_gaiyou_ippan.pdf
▼ 注3
SMB:Standardization Management Board、標準管理評議会
▼ 注4
SG:Strategic Group、戦略グループ。現在SG1〜SG6の6つ。
▼ 注5
TC:Technical Committee、技術(専門)委員会
▼ 注6
UHV:Ultra High Voltage Technologies、超高圧電圧技術
▼ 注7
LVDC:Low Voltage Direct Current、低電圧直流