IEC SMB SG4における直流電圧の標準化動向
〔1〕これまでのSG4の活動状況
次に、2009年12月にスタートしたSG4(14カ国の委員で構成。年2回程度開催)の活動の内容は表5のようになる。もともとSG4は、スウェーデンの国内委員会から、将来的には直流の規格の整備が必要ではないかという提案があり、それがIECの中で審議されて、4番目に了承された戦略グループ(SG4)となったのである。
表5 IEC SMB/SG4における検討内容の経緯
表5からわかるように、SG4の活動の範囲は、当面、データセンターや通信施設向けに市場性がある直流400V級のアプリケーションを優先的に扱う電気的なシステムの検討である。データセンターや通信施設にはバックアップのための蓄電池や非常用発電装置が設置されており、また近年は、太陽電池や燃料電池を導入するケースも増えている。
スマートグリッドは、系統電源のみならず、蓄電池や分散型電源を有効活用し需要設備である各種負荷機器を含めシステム全体の効率的な運用をめざすものであり、データセンターや通信施設で検討された直流関連技術の適用や展開が期待できる。
〔2〕直流給配電システムと標準化の範囲
図3に、SG4における直流給配電システムと標準化の範囲を示す。図3の赤の破線で示すように、SG4では、直流給配電システム全体、あるいは各機能単位(例:電力変換機能、蓄電機能等)を連携(相互接続)するインタフェースにおいて技術的な標準仕様が必要となるため、その検討が行われている。
図3 直流給配電システムと標準化の範囲例
〔3〕当面の最優先課題は直流400Vの検討
表4に示したように、SG4の第7回目の会合で、「データセンター・通信施設向け直流400Vを優先的に検討を行う」ことが決定されたこともあり、この分野を第1の優先順位として、その規格の整備を行うことになった。
現在、家庭やオフィスでは、多くの100Vあるいは200Vなどの低電圧の交流装置やシステムが導入され利用されている。実は、このような交流の装置の電源内部を機能的に順番に追いかけていく(後述)と、交流電力で動いているように見えるが、実際は、インバータエアコン(直流電力から変換する交流電圧の周波数を変化させてモーターの回転を調節する方式)やパソコンのアダプタ(後述)などは、交流の入力電圧を直流電圧に変換して動作させる仕組みになっている。しかも、それらの多くは直流300〜400V近辺の電圧になっているため、そのような400Vの直流電圧を直接供給することによって、変換損失をなくし効率よく電力を供給しようということになったのである。
データセンター分野では380Vの直流電圧とすることで、IECのみならずITU-TやETSIなどの他の国際標準との整合性も図られている。図4にその理由を示す。
図4 日米欧の電圧の比較と400V直流電圧となった理由
理由の詳細は後述する「直流400Vの給電をどのように実現するか」で解説するが、ここでは、日米欧の違いも含めて簡単に紹介しておく。なお、実際の動作電圧は380V近辺であるが、キリの良いところで400V DCと表現することもあるが、同じ内容を指すことが多い(これは、日本でも交流は200Vであるが、210Vや220Vなど実運用では幅をもっていることと同じである)。
今日におけるコンピュータやサーバなどICT機器の電源入力は交流方式が一般的である。しかし、機器の内部では、CPUやメモリなどは直流で動作するため、直流電力の供給が必要である。したがって、現在は交流を直流に変換(整流)するアダプタなどを使用している。これによって、世界各国の交流電圧を利用して動作できるようにしている。
単相交流の配電電圧として最も高い値は、英国などで用いられている240Vである。電圧の変動と交流電圧のピーク値〔実効値の √2倍=約1.41倍)を考慮すると、交流から直流に整流した時の電圧は、交流の配電電圧の変動の上限を定格の10%とし、1.1倍を乗じ、240V×1.1×1.41(√2)=372Vとなり、さらに電圧の安定が図られた後、公称電圧である380V程度の直流電圧になる。最終的には直流380VをDC/DCコンバータにて12Vや5Vなどの低い直流電圧としてCPUやメモリに給電している。これがICT機器の電源部の機能であるが、電源供給側から直接380Vを供給することができれば、途中の電力変換や電圧の安定回路が不要となり、高効率な給電を実現することができる。