直流と交流は、そもそも何がどう違うのでしょうか?
まず、電気的に見れば、「電流が流れる」あるいは「電圧がかかる」という意味では交流も直流も同じですが、その電流や電圧について、流れる向きが時間とともに変わるもの(交流)と一定のもの(直流)という違いがあります。
電気の世界は水の流れに例えられることがありますが、水も川の流れのように基本的には高い方から低い方に流れます。電気回路においても、直流は基本的に常に一定方向に流れます。それに対して交流は、常に、周期的にもしくは不定期に流れる方向が変わります。
電気は、自然にあるものは直流が圧倒的に多いのです。
例えば、冬に衣服などでパチパチと静電気がおこったり、または雷がおこったり、あるいはやや人工的ですが、太陽光を使った発電なども含めると、物理現象・自然現象としては、直流が多い状況なのです。
直流方式はエジソンが最初ではなかった?
120年前のエジソンの時代を見ると、当時、ドイツのベルリンでも英国のロンドンでも直流方式が使われていました。つまり、エジソンが世界で初めて直流方式を事業として始めたのではなかったのです。そのため、米国・ニューヨークでエジソンが直流方式を開始したのは、世界で3番目だったことが後でわかったのです。
ここで1つ言えるのは、直流の発電所とその電力を送るケーブル、さらに需要家部分の負荷(当時は主に電灯であった)が、地域的にある程度一体化しており、近距離にあったということです。つまり、エジソンの例でいえば、ニューヨークの街中に発電所があったということなのです。これはロンドンでも、ベルリンでも、日本においても東京都内に何箇所か発電所があったのです。
このように発電所が街中にあると、一見、効率的に見えましたが、困ることが起こりました。当時は、おそらく石炭を主な燃料として蒸気機関で発電していたので、そうすると発電機を回すために、煙突からもくもくと煤煙が出るのです。現在のように、効率の良い燃焼機関ではなかったため、街中にそのような発電所があれば、住民にとってはあまり良くない環境だったのです。
それに対して交流方式は、長距離・大容量送電に適したシステムとして優れていました。米国ではナイアガラの滝の水を使った水力発電を行ったり、また北欧では北部の山の豊富な水を使って水力発電が行われるようになったのです。その水力発電の電気を遠くから都市部に送るほうが煤煙も出なくて環境に良いというのは疑う余地はありません。日本においても、信濃川や鬼怒川、箱根、伊豆方面の水力を使って、送電線で東京都心部まで電気をもってくるほうが、はるかに環境に良いのです。
良いか悪いかは別として、例えば都心部からはかなり遠い山奥の水力発電所から電圧を上げて、送電線で都心部に効率的に電気を送ることができる点が、交流の良いところだったのです。エジソンとテスラの直交戦争当時では、当初はエジソンなどによる直流方式が世界に登場したのですが、やはり環境も考慮して効率的に発電できる交流方式に軍配が上がったのです。
直流に比べて交流の良いところはどのような点でしょうか?
直流に比べて交流の良い点は、1つは電圧を上げたり(昇圧)下げたり(降圧)することが容易な「変圧器」が考案されたことです。もう1つは、効率よく電気を送る「単相」や「三相」などの方法が交流のほうが優れていたのです(表1)。
表1 単相、単相3線式、三相の違いと特長
例えば、字のごとく単相は1つの相ですので、「電気を送る線」と「戻ってくる線」という1対のループが必要となるのです。このため、電線が2本必要となりますが単相と呼ばれます。しかし、三相の場合には、単相×3だとすると6本(=2本×3)の電線が必要になりますが、交流方式の場合には、それが通常3本で電気を送ることができるのが特長です。
街中の電柱の配電線を見ていると、だいたい3本使用されていることが多いことに気づくかと思います。これは交流ならではの方式で、電気を効率的に送る方法なのです。
なお、日本の屋内配線で用いられている100Vは、図1に示すような単相3線式が導入されています。図1では、0Vの中性線を挟んで+100Vと-100Vの位相の異なる交流が引き込まれたものを、中性線とそれぞれの相の間の100Vでユーザーに供給する方式となっています。また、図1に示すように200Vも取り出せるようになっています。
図1 家庭における単相3線式の仕組み
〔出所 丹 康雄、『ECHONET Lite 時代を迎えたスマートハウス構築のためのホームネットワーク技術2013』、インプレスR&D、2012年9月〕