スマートグリッド共通通信基盤全体のシステム構成
〔1〕設計・開発の基本コンセプト
九州電力のスマートグリッド共通通信基盤は、シームレス通信システム部と通信管理サーバ部に大別される。スマートグリッド共通通信基盤を構成する主要サーバ群の概要を表1に示す。また、複数の通信方式を用いて、業務システムおよびスマートメーターを収容する場合における、スマートグリッド共通通信基盤のシステム構成を図1に示す。共通通信基盤から通信事業者網の基地局を通して、家庭のスマートメーターと双方向通信が行われる。
〔出所:九州電力提供〕
設計・開発の基本コンセプトとしては、将来発生する業務に対応できる拡張性(現在は自動検針のみ)を備えており、例えば将来、太陽光発電などを含めた新しい業務が発生しても、この基盤で対応できるようになっている。また、マルチホップ方式などの新しい通信方式が登場しても、対応できる設計となっている。
〔2〕スマートグリッド共通通信基盤の機能
次に、スマートグリッド共通通信基盤の機能を見ると、図2、表2に示すように、8つの機能を備えている。
〔出所:九州電力提供〕
ここでは、図2、表2に示す8つの機能のうち、とくに、ファームウェア注1配信機能と迂回通信機能について、図3、図4に示す。
図3は、ファームウェアに不具合(バグ)があったり、機能が強化された(バージョンアップ)りした場合に、業務システムがスマートメーターに新しいファームウェアを転送する仕組みを示したものである。これによって人手を介することなく、ファームウェアの更新が遠隔から可能になる。
なお、図3の⑤のFTP(ファイル転送)によるファイル取得については、クラウドに設置されたファイルサーバ(FTPサーバ)からファイルを配信することも検討されている。
〔出所:九州電力提供〕
図4は、WiMAX環境における迂回通信機能の仕組みを示した例である。
〔出所:九州電力提供〕
図4の上部(青矢印)の場合、スマートメーターAは、WiMAXの通信可能範囲内に設置されているため直接通信ができるが、スマートメーターBはWiMAXの通信可能範囲外(圏外)のため、直接通信ができない。このため、スマートメーターAを介し近距離無線通信(例:920MHz特定小電力無線)を使用して、(ワンホップで)スマートメーターBへデータを無線で送信しているところである。このような機能は迂回通信機能と呼ばれる。
このとき、920MHz特定小電力無線の物理層とMAC層には、高速なWi-SUN規格注2を使うことが検討されている。なお、屋外、屋内に使用されるPLCについては、国際標準のG3-PLC規格(ITU-T勧告G.9903標準)が検討されている。
これまで解説してきたスマートグリッド共通通信基盤は、スマートメーターだけをターゲットにしているのではなく、今後M2Mなどの進展に伴ってセンシング(センサーを利用したいろいろな制御)などの業務が発生することも想定しており、そのような通信もこの基盤で対応できるように構築されている。
▼ 注1
ファームウェア:スマートメーター(ハードウェア)の制御を行うためにスマートメーターに組み込まれたソフトウェア。
▼ 注2
Wi-SUN規格:物理層にIEEE 802.15.4g(SUN)をMAC層にIEEE 802.15.4eを用いる規格。
SUN:Smart Utility NetWork、スマートグリッド向け通信規格(物理層)。