ICTプラットフォームを活用したマンション向けサービス事業の例
最初に、マンションに住んでいる居住者向けに、先進的なマンション生活を推進するマンションライフサービスプロバイダでありMEMSアグリゲータでもある、(株)ファミリーネット・ジャパン(FNJ)の事例を解説する。ここでは、ICTプラットフォームを活用したマンション向けサービス事業として、(株)ファミリーネット・ジャパン(FNJ)が、
- 野村不動産(株)と共同開発した先進的なICTプラットフォーム「エネコック」(マンション・エネルギーシステム)の内容
- イオンディライトと共同でマンション事業の展開を進める内容
を見ていく。
〔1〕マンション・エネルギーシステム「エネコック」
1次エネルギー消費量の、約20%の削減に向けて、高圧一括受電適応エコキュート(エネルギーを電気に一元化することによって、エネルギー消費量の最適化を図る)を採用し、マンション・エネルギーシステム「エネコック」と組み合わせることによって、日本で初めて「次世代型マンション・ネルギーシステム」(図3)を開発(野村不動産とFNJの共同開発)し、野村不動産が計画を推進中の新築分譲マンション「プラウドシテイ新川崎」に導入すると発表している(2013年11月1日)。
http://www.fnj.co.jp/news/20131101.html〕
〔出所:すでに野村不動産とFNJでは、占有部の電力とインターネットを融合し、共用部電力のデマンドコントロールなどで電力消費のピークを抑制するマンション・エネルギーマネジメントシステム「エネコック」を開発し、導入を進めている。このICTプラットフォームをベースにして、今回は、エネルギー利用先進モデルを作り上げるために、パナソニック製の「高圧一括受電適応エコキュート」を採用、ピークカット・ピークシフトの2つの設定を可能にすることによって、マンション全体の電力ピーク抑制を図ることを可能にした。
これによって、エネルギーの一元化を図り、MEMS(FNJ)を介した太陽光発電エネルギーや蓄電エネルギーなどとともに、マンション全体の状況に応じたエネルギー消費の最適化を可能とする、次世代型マンション・エネルギーマネジメントを実現することができる。
エネルギーマネジメント以外では、次のようなことが実現可能となっている。
- リビングにおける最新の高効率エアコンの実装設置
- 占有部のLED化などによって、一次エネルギー消費量を従来の電気ガス併用住宅に比べ約20%削減可能
- トップランナー省エネ家電商品を設置することで、最大約27%の電気代の削減が可能
- 一括受電を活用した「エネコック料金プラン(スマートプラン)」によって、従来の電気/ガス併用受託に比べ、光熱費を約20%削減可能にし、日中・夜間ともに電気を平準的に利用する家庭では、さらなる削減も可能
〔2〕マンションサービスの新会社「Aライフサポート(株)」の設立
ICTプラットフォームを活用したマンション向けサービス事業について、Aライフサポート(株)(東京都中央区)と(株)ファミリーネット・ジャパン(FNJ)の事例からその内容を見ていく。
総合ファシリティマネジメントサービス(総合FMS)事業を展開するイオンディライト(株)(大阪市)は、日本最大級のマンション向けインターネット接続サービス会社である(株)ファミリーネット・ジャパンと共同で、マンションサービスにおける新会社として「Aライフサポート(株)」を2012年11月28日に設立した。
イオンディライトでは、従来からマンション管理事業を展開している中で今後、居住者の生活利便性を高めるため、ICTプラットフォーム(情報通信基盤)を活用した新しいサービスを検討しており、新たなサービスを提供する核となるICTプラットフォームの構築に向けて、すでにインターネット接続サービスを約16万世帯へ提供している。なお、ICTプラットフォームは、FNJのサービスを活用して行っている。
Aライフサポート(株)は、マンション管理組合向けに、ICTを活用した管理サービス、リフォームやエネルギーマネジメントサービスを展開。さらに、マンションの居住者に、イオングループが保有する、生活に根ざした豊富なサービスと総合FMS(ファシリティマネージメントシステム)の多彩なサービスで、さらなる安全・安心・快適で省エネな暮らしを提案する、新しいライフサポートを提供する事業展開を進めている(図4)。同社の事業内容は次の通りである。
- マンション管理および居住者生活支援に関わる人的サービス並びに情報処理サービス、情報通信サービスおよび情報収集・提供サービス
- インターネットなどのネットワークを利用した各種商取引の媒介、情報提供および運営等に関する業務
- マンションの管理適正化の推進に関する法律等で定義されるマンション管理業
- マンション管理に関するコンサルティング
http://www.alifesupport.co.jp/service/〕
〔出所:本記事は、『事業化フェーズに突入したHEMS/BEMS/MEMS最新技術動向2014』[スマートマンション市場の展開と新プラットフォーム/ビジネスモデル](インプレスビジネスメディア刊、2014年2月20日)の第3章より抜粋し、加筆して再掲載したものである。同書の内容詳細はこちら ⇒ https://r.impressrd.jp/iil/HEMS/BEMS/MEMS2014
Profile
奥瀬 俊哉(おくせ としや)
株式会社ブロードリーフ
1986年〜富士通(株)にてISDN-TAやISDN通信カード、パソコンLAN(IEEE 802.3)向けの通信カード、通信モジュールの商品企画、営業技術を担当。1999年〜(株)ACCESSにてNTT Lモード端末向けブラウザの商品企画、事業推進を担当。2005年〜(株)フラクタリストを経て、2008年〜(株)メイクウェーブ・ジャパンを設立し、代表取締役に就任。OSGi、TR-069などのソフトウェアライセンスやサポート、OSGiバンドルソフト開発、サービスプラットフォームの支援など。2011年〜(株)ブロードリーフ。2010年12月に(株)メイクウェーブ・ジャパンを解散、筆頭株主の(株)ブロードリーフにて継続して日本代理店業務を継続中、現在に至る。