日本の電力自由化の歴史
これまで日本の電力の自由化は、図1のように、(制度改革によって1995年から電力卸売自由化は行われているが)ここでは2000年3月以降の段階的な動きを示している。
図1 電力小売販売の自由化の歴史
今回、2016年4月からスタートする電力小売全面自由化は、一般家庭やコンビニ、町工場など向けへの新規参入が可能となり、一般家庭を含むすべての需要家が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになる。しかし、需要家にとっては電力会社の選択肢が広がるだけでなく、これまでにはなかった義務(例えば、引越の際に小売事業者の指定をしなければならないなど)も伴い、また冒頭に述べたようなトラブルのリスクも伴うことになる。
それでは、なぜ2005年以降止まっていた自由化が、今回の全面自由化へと進展したのだろうか?
その一番のきっかけは、不幸にして起こった2011年3月11日の東日本大震災である。政府は、以下の3つの観点から、電力システム改革を進めることになった(「電力システム改革について」、経済産業省 資源エネルギー庁、2015年11月)注2。
- 安定供給を確保する
- 電気料金を最大限抑制する
- 需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する
このような背景から、2012年に電力システム改革専門委員会が設置され、2013年4月に「電力システムに関する改革方針」が閣議決定された。これを受けて、2013年(第1弾改正)、2014年(第2弾改正)、2015年(第3弾改正)と電気事業法改正法案の成立を経て、今回の電力小売全面自由化に至ったのである(図2)。
図2 日本の電力システム改革の全体像
その結果、約8兆円という新しい市場が開放されることになり、すでに自由化されている契約電力部分も含めると、実に約18兆円という巨大な電力市場が拓けたのである(図3)。
図3 電力小売全面自由化による8兆円市場