[クローズアップ]

世界の製造強国トップを目指す中国の国家戦略「中国製造2025」

― 4つの原則・5つの方針を3段階で実現へ ―
2016/04/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

「中国製造2025の通知」の構成

〔1〕「中国製造2025」のキャッチフレーズ「1、2、3、4、5・5、10」

 「中国製造2025」について、前述した工業・情報化部(省)は、理解しやすくするために、表2に示すように「イチ・ニー・サン・シー・ゴーゴー・ジュー」(1、2、3、4、5・5、10)と、ゴロ合わせでポイントを説明している。

表2 1、2、3、4、5・5、10と総括[工業・情報化部 苗(シャオ)部長]

表2 1、2、3、4、5・5、10と総括[工業・情報化部 苗(シャオ)部長]

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」、2015年8月5日

〔2〕中国製造2025は4部構成

 この中国製造2025は先に述べたとおり、2015年5月に「中国製造2025の通知」という報告書として発表されたが、表3に示すように、「発展情勢と環境」「戦略方針と目標」「戦略任務と重点(5つのプロジェクトで推進)」「戦略支援と保障」という4部構成となっている。

表3 「中国製造2025の通知」の構成

表3 「中国製造2025の通知」の構成

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」(2015年8月5日)を元に一部修正して作成

〔3〕中国製造2025は3段階の戦略目標の第1段階

 図2に示すように、中国製造2025は、中国の建国100周年である2049年に向けて、製造強国(「製造大国」ではない)を推進する3段階の戦略目標(2015〜2049年の35年にわたる壮大な計画)のうちの、第1段階(最初の10年間)に位置づけられている。

図2 国情・現実に立脚し、3段階で製造強国の戦略目標を実現

図2 国情・現実に立脚し、3段階で製造強国の戦略目標を実現

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」、2015年8月5日

 中国製造2025の第1段階は、表4に示すように、「①市場が主導、政府が誘導」から「④自主的発展、開放強化」に至る、4つの原則(基本原則)のもとに推進されている。

表4 「中国製造2025」の基本原則(4つの原則)

表4 「中国製造2025」の基本原則(4つの原則)

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」(2015年8月5日)を元に一部修正して作成

〔4〕中国製造2025の5つの方針

 また、中国製造2025では、既存の問題を解決し、新たな発展を推進するために、表5に示す5つの方針、すなわち、①イノベーション主導、②品質優先、③グリーン発展、④構造最適化、⑤人材重視を基本に推進していくことが必要としている。

表5 「中国製造2025」の基本方針(5つの方針)

表5 「中国製造2025」の基本方針(5つの方針)

出所 日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所 真家陽一、「中国の経済・政策・ビジネス環境の最新動向」(2015年8月5日)を元に一部修正して作成

〔5〕「中国製造2025」の5大プロジェクト

 表3で挙げた9つの「戦略任務と重点」を実現するため、「5大プロジェクト」(図3)が2025年までの計画を推進する。

図3 『中国製造2025』の5大プロジェクト

図3 『中国製造2025』の5大プロジェクト

出所 国務院「『中国製造2025』に関する通知」をもとに作成

  1. 製造業イノベーションセンター建設プロジェクト
    2020年までに、約15カ所の製造業イノベーションセンターを重点的に設立し、2025年までに約40カ所の設立を目指す。
  2. スマート製造プロジェクト
    2020年までに、製造業の重点分野におけるスマート化レベルを顕著に引き上げ、パイロット・モデル事業の運営コストを30%削減(2025年までに50%削減)し、製品生産サイクルを30%短縮(同50%削減)し、不良品率を30%低減(50%低減)する。
  3. 工業基礎強化プロジェクト
    2020年までに、中核基礎部品、基幹基礎材料の国内自給率40%(2025年までに70%を実現)を実現し、さらに2025年までに代表的な先進的プロセス80種類の普及と応用を実現し、一部を世界トップレベルに引き上げる。
  4. グリーン製造プロジェクト
    2020年までに、グリーンモデルファクトリー1,000カ所およびグリーンモデル産業パーク100カ所を建設し、重点業界における主要な汚染物質排出量を20%削減する。2025年までに、製造業のグリーン発展および主要製品1単位当たり消費量を世界トップレベルに到達させる。
  5. ハイエンド設備イノベーションプロジェクト
    大型航空機、ガスタービン、民用宇宙、スマート・グリーン列車、省エネ・新エネルギー自動車などのイノベーション・産業化の特別・重要事業を実施する。2020年までに、これらの分野における自主開発、応用を実現する。さらに2025年までに、独自の知的財産権のあるハイエンド設備市場のシェアを大幅に高め、重要分野の設備で世界トップレベルを達成する。

*    *    *

 以上、「中国製造2025」を概略的に見てきたが、今後、世界最大の人口を抱え、活発なイノベーションを推進する中国における新・産業革命がどのように進展し、世界経済に影響を与えていくか、世界中から注目されている。

◎取材協力(敬称略)

箱﨑 大(はこざき だい)

箱﨑 大(はこざき だい)

独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部中国北アジア課長

1990年3月 京都大学経済学部経済学科卒業。
1990年4月 三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。日本経済研究センター予測研究員、
三和総合研究所副主任研究員、UFJ銀行香港支店シニアエコノミストを経て、
2003年11月 日本貿易振興機構入構。海外調査部中国北アジア課課長代理、北京事務所次長(調査担当)を経て、2014年4月より現職。

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