[東京電力 カスタマーサービス・カンパニー・バイスプレジデント 佐藤梨江子氏に聞く!]

東京電力 カスタマーサービス・カンパニーバイスプレジデント 佐藤梨江子氏に聞く! 総合エネルギーサービス企業へ脱皮する 東京電力の電力小売全面自由化への戦略《後編》

2016/04/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

すべてのサービスをまとめて提供する新ビジネスモデル

〔1〕電力会社と住宅メーカーが共同開発した日本初の専用プラン

─編集部:今後、どのような新しいプランやビジネスモデルを考えていますか?

佐藤:現在、当社が一番考えなくてはならないと思っていることは、今回新しく発表した料金プランが、電気使用量の多いお客さまにとってメリットが大きいプランであり、使用量が少ないお客さまからはメリットが少ないと指摘されている点です。

 これについて申し上げれば、使用量が少ないお客さまも、例えば電気は使わないけれど、携帯電話あるいは通信(インターネット)はたくさん使うなど、それぞれのライフスタイルにあわせていろいろなサービスを利用されています。

─編集部:そのとおりですね。

佐藤:ですから、いろいろな企業と提携することによって、家計における出費をトータルで安くするようなサービスを提供していきたいと思っているのです。

 電気料金を安くするサービスだけでは限界があります。あまり電気を使わないお客さまがどのようなサービスを利用されているのか、そこをよく見て、さまざまなサービスとのセットなども考えていきたいと思っています。

─編集部:最近、東京電力と三菱地所ホームは、2016年4月1日以降に三菱地所ホームの全館空調システム“エアロテック注4”を導入した新築戸建住宅に入居する顧客向けの新しい電気料金プランを共同開発し、4月1日から申込みの受付を開始すると発表されましたが?

佐藤:はい。この電気料金プランは、私どもの新しい料金プラン「プレミアムプラン」と「スマートライフプラン」を“エアロテック”の利用実態に合わせてカスタマイズしたもので、電力会社と住宅メーカーが日本で初めて共同開発した専用プランです。

 近年、花粉やPM2.5(微小粒子状物質)、ヒートショック問題などを受け、住まいにおける温熱、空気環境を向上させ、より快適により健康に暮らしたいというお客さまのニーズが高まっています。

 私どもは、こうしたお客さまに、安心して空調・換気設備を選んでいただけるよう、快適性や清潔性を兼ね備えた設備を第三者の立場から推奨する「東京電力スマートウェルネス設備推奨」を2015年5月から開始しており、エアロテックはこの推奨設備の1つです。

 全館空調システムは基本的に、24時間365日稼働させるものですが、“エアロテック”の電気使用実態を踏まえた料金設定としました(図2)。

図2 エアロテックの年間冷暖房費比較

図2 エアロテックの年間冷暖房費比較

出所 http://www.tepco.co.jp/cc/press/2016/1267258_7738.html

─編集部:どのような具体的なプランがありますか?

 「TEPCOプレミアムプラン for エアロテック」は、電気・ガス両方を使っているお客さま向けのプランであり、電気料金の定額範囲を300kWhまで(「プレミアムプラン」は400kWhまで)に設定したことから、使用量の少ない季節のことを心配することなくご契約いただけます。また、オール電化で全館空調システムを使っているお客さま向けのプランとして、昼夜間の単価差を縮小した「TEPCOスマートライフプラン for エアロテック」も新たに用意いたしました。

〔2〕すべてのサービスをまとめて提供できるビジネスモデル

─編集部:たくさんのサービスプランが提供されるのはありがたいのですが、携帯電話のように、プランが多すぎて、どれが一番いいのかがなかなか判断しにくいのです。ベストなプランをわかりやすくして欲しいですね。

佐藤:いろいろな考え方があると思いますが、いずれにしてもお客さまにとっては、今使っている家庭の「すべてのサービスをまとめて提供できるビジネスモデル」が理想的なのではないかと思っています。

 これを実現するためには、提携する通信事業者もガス会社も、できるだけ多いほうがお客さまにとって利便性が高いと考えます。当社が電気だけでなく、ガスも扱うようになれば(契約窓口を弊社の1つにしていただければ)、お客さまにワンストップで(サービスを)提供できるようになります。

 東京電力がどこの企業と提携しているかについては、当社のホームページで確認いただけますし、ご不明な点があれば、新料金プランお問い合わせセンター(電話番号:0120-995-333)にご連絡していただければお答えいたします。

─編集部:はい、問い合わせてみます。携帯電話を他の事業者に乗り換えようとすると、最後に「メールアドレスの変更」が要求されるので、そこで切り替えをあきらめる人もいます。

佐藤:例えば、携帯電話については、当社の既存エリアのお客さまも、ソフトバンク(現在はソフトバンクだけ)様だけでなくて、NTTドコモ様やKDDI様とも提携を検討し、メールアドレスを変更しなくてもよいよう、3社すべてに対応していければと思います。


▼ 注4
エアロテック:フロアごとのゾーン制御ではなく、1台のコンパクトな室内機で24時間365日、各室ごとに好みの温度に設定ができるため、家族全員が快適な温度環境で暮らすことができる。加えて、HEMS(Home Energy Management System)と連携することによって、空調にかかわる消費エネルギーを大幅に削減することも可能なシステムとなっている。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2016/1267258_7738.html

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