[東京電力 カスタマーサービス・カンパニー・バイスプレジデント 佐藤梨江子氏に聞く!]

東京電力 カスタマーサービス・カンパニーバイスプレジデント 佐藤梨江子氏に聞く! 総合エネルギーサービス企業へ脱皮する 東京電力の電力小売全面自由化への戦略《後編》

2016/04/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

中部電力、関西電力のサービスエリアへの挑戦

─編集部:小売全面自由化に伴って、東京電力が、中部電力や関西電力のサービスエリアへビジネスを拡大し競争するということを聞くと、「いよいよ決戦の火ぶたが切られる」という緊張感が出てきます。

佐藤:中部電力様や関西電力様のエリアの一般家庭のお客さまには、東京電力としてはこれまで接点がありません。その意味で、まったくの挑戦者なのです。そのため、これまで縁のなかった東京電力という会社との契約を考えるきっかけをもってもらうために何で訴求していくか、を考えました。

 先般発表した中部電力様のサービスエリア向けの料金プラン(図3)や、関西電力様のサービスエリア向けの料金プラン(図4)のように、電気料金の単価については競争力のある料金で設定を行っています。関西電力様も中部電力様も、いわゆる西日本に位置し、そのエリアは60ヘルツ(Hz)地帯です。

図3 東京電力の「中部電力サービスエリア向けの料金プラン」

図3 東京電力の「中部電力サービスエリア向けの料金プラン」

出所 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu16_j/images1/160107j0102.pdf

図4 東京電力の「関西電力サービスエリア向けの料金プラン」

図4 東京電力の「関西電力サービスエリア向けの料金プラン」

出所 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu16_j/images1/160107j0102.pdf

 私ども東日本は50ヘルツ(Hz)地帯なので、その間は長野県にある新信濃の周波数変換所(50Hz ⇔ 60Hzの変換所)を通して電力を送電しなければならず、容量に制約があります。このため、中部電力様や関西電力様のエリアで契約しているお客さまに対しては、60Hz地帯で余っている電気を調達(現地調達)して販売しています。

─編集部:電気はどのような方法で調達されるのですか。

佐藤:例えば、大きな工場で自家用発電機をもっていて、自社で全部使いきれずに余っている電力、あるいは事業会社などと契約し、購入しています。

─編集部:日本卸電力取引所(JEPX注5)なども使うのでしょうか。

佐藤:はい。JEPXも使いますが、取引所ですと電気の価格が変動しますし、また必ずしもお客さまと契約している容量を確保できない可能性もあります。このようなことを前提に、JEPXで融通できる電力量を見込みながらも、十分な電力量を年間契約することで調達確保したうえで、お客さまと契約していく方針です。また、関西電力様や中部電力様の料金などを踏まえて、競争力のある料金を設定しました。

─編集部:すでに、中部電力も関西電力も、東京電力エリアでビジネスを展開し、水面下では、競争が激化していると聞きますが、何かトラブルは起こっていないのでしょうか。

佐藤:公正な競争ですからトラブルは起こっていません。関西電力様も中部電力様も、さまざまな形ですでに首都圏(東京電力エリア)で事業展開されています。当社は、今後公正な競争をしていこうと思っています。


▼ 注5
JEPX:Japan Electric Power Exchange、一般社団法人日本卸電力取引所(卸電力取引所)。
JEPXは、電気の売り手側と買い手側の会員同士が電気の売買を行う場所であり、2003年11月に設立された。会員(売り手側/買い手側)とは、一般電力会社、新電力会社、卸・自家発電などの電源保有者のことである。日本では、1995年の発電部門の自由化(独立系発電事業者の参入)を皮切りに、段階的に電力の自由化が行われてきた。

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