[特集]

首都圏において電力供給サービスを開始した「関電エネルギーソリューション」のビジネスモデル ─ 後編 ─

2014/06/01
(日)
SmartGridニューズレター編集部

4.導入後のエネルギーコストをKEMSでさらに削減

〔1〕 KEMSによる「エネルギー利用方法のチューニング」

Kenesでは、ユーティリティサービスに省エネ・運用のトータルサポートを行うKEMS(Kenes Energy Management System)を組み合わせて、設備導入後のエネルギーコストをさらに削減させることで、ライフサイクルコストの最小化を図っている。 このため、「エネルギー利用方法のチューニング」ということが、同社サービスのポイントのひとつにもなっている(図4)。 第1の初期段階では、さまざまなケースを想定・検討することにより、設備導入の設計段階で最適化を図り、最適設計効果を得る。 第2の運用開始1年後の段階では、さらに最適化を加速させるチューニングが行われる。具体的には、さまざまな運転条件の下で得られた1年間のデータに基づいて、機器の特性を把握・分析し、施設の利用実態に適した運用や制御に変更をしていく。 第3段階として、契約満了時まで、もう一段踏み込んで顧客設備の運用状況を分析評価する運用コンサルによって、省エネ提案を継続的に行い、顧客と一体となって省エネが推進される。 ある冷凍食品工場の冷凍システムの場合、KEMSによって、18カ月間のチューニング効果として5.4%の電気料金削減を実現した。 このように、設計段階から、契約の全期間にわたって顧客の使用状態にあわせた運用コンサルをしていくところが、単なるリース会社と異なるKenesのポイントとなっている。

〔2〕3種の基本運用プランと特徴

Kenesユーティリティサービスは、次のような3種の運用・保守管理のプランを基本として顧客ニーズにあったサービスを提供している(図5)。

  1. ベーシック・プラン:熱源設備・受変電設備・遠隔監視(故障警報のみ)を設計・施工・所有し、定期点検を実施。
  2. スタンダード・プラン:熱源設備・受変電設備・遠隔監視(BEMS)を設計・施工・所有し、定期点検を実施。
  3. プレミアム・プラン:熱源設備・受変電設備・遠隔監視(BEMS)を設計・施工・所有し、フルメンテナンスによる完全保守。

設備については、基本的にすべて同社の保有となっている。 以上、2016年に規制緩和が行われる電力の小売市場の全面自由化を目前に控え、新しいビジネスモデルの例として「関電エネルギーソリューション」(Kenes)を取り上げて、その誕生から今日までを解説してきた。新電力「Kenes」が、新市場で大きく成功することを期待したい。(終わり)

◎取材協力

田宮 久史(たみや ひさし)
株式会社関電エネルギーソリューション
営業本部 ユーティリティ営業部長

 

 

 

 

小田 敏広(おだ としひろ)
株式会社関電エネルギーソリューション
総務部 広報グループ部長

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...