原子力発電所の発電の仕組み
〔1〕発電の仕組み:水(蒸気の流れ)と電気の流れ
図3は、柏崎刈羽原子力発電所におけるBWR(Boiling Water Reactor、沸騰水型原子炉)を用いた発電の仕組みである。
図3 BWR(Boiling Water Reactor、沸騰水型原子炉)による発電の仕組み
出所 東京電力ホールディングス「柏崎刈羽原子力発電所の現況について」、2016年6月21日
図3に示すように、①原子炉で発生した蒸気は、②タービン発電機に送られて、蒸気タービン(高圧・低圧タービン)の羽根に吹きつけられ、この蒸気タービンと直結された発電機を回転させて電気を発電する。③蒸気タービンを回した蒸気は復水器(海水から汲み上げられた冷却水による冷却装置)で水に戻され、さらに④給水ポンプで原子炉に戻されて再利用される。
また、①発電機で発電された1万9,000Vの電気は、②変圧器で50万Vに昇圧され、③50万V開閉所注2を経て、④新新潟幹線と南新潟幹線の2つの50万Vの送電線を経由して、関東各地に送電される。
また、電源喪失などに備えた非常用ディーゼル発電機をはじめ、非常用冷却ポンプや、使用済燃料プールなども設置されている。
写真2に、検査中の6号機の燃料棒などを格納する原子炉圧力容器(ABWR)と使用済燃料プールを示す。
写真2 左は審査中の6号機の燃料棒などを格納する原子炉圧力容器(ABWR。左の円形部分:約直径7.1m)。右は使用済燃料プール
出所 編集部撮影
表2 6号機の原子炉設備の主な概要
出所 各種資料より
また、表2に、6号機の原子炉設備の主な概要を示す。
写真3に7号機のタービンおよび発電機(ABWR、135.6万kW)の外観を示すが、右側の四角い箱は、7号機(GE製)の高圧蒸気タービンの外観である。
写真3 7号機のタービンおよび発電機(ABWR、135.6万kW)の外観〔右側の四角箱:7号機(GE製)高圧蒸気タービンの外観〕
出所 編集部撮影
〔2〕1個のウランペレットで一般家庭8カ月分の電気を発電
写真2に示す原子炉6号機の原子炉圧力容器(約70気圧)には、図4に示すように、高さ約4.5m、外径11mm(厚さ約0.7mm)の1本の燃料棒の被覆管(厚さ約0.7mmのジルコニウム合金)の中に、(たばこのフィルタのような)直径約10mm×高さ約10mmの円筒状のウランペレット(二酸化ウラン)が約350個充填されている。
図4 原子力発電所の燃料棒、燃料集合体の構造
出所 東京電力ホールディングス「柏崎刈羽原子力発電所の現況について」、2016年6月21日
これが燃料集合体(幅約14㎝、高さ約4.5m)の単位(9×9)に束ねられ、6号機および7号機(各出力135.6万kW)では、それぞれ合計872本(制御棒205本)が使用されている。
1個の小さなウランペレットでは、一般家庭の8カ月分程度の電気を発電できる注3。
この燃料棒に中性子を当て、ウランペレットを燃焼させ発電用の蒸気をつくる。燃焼時のペレットの中心部は約1600℃で燃え、その表面は水(蒸気)が約300℃(蒸気温度:287℃)で流れ、蒸気を発生させ、タービンに送られる。すなわち、厚さ約0.7mmのジルコニウム合金の内側は約1600℃、表面は約300℃と、実に約0.7mmの厚さで約1200℃(=1600℃−300℃)の温度勾配になっているのである。
▼ 注2
50万V開閉所:ガス絶縁開閉器。送電線の事故時などに、消費者に影響を与えないように電路を開閉するスイッチ。
▼ 注3
1個のウランペレット:一般家庭の消費電力が平均300kWh/月であるとすると、1個のウランペレットで2,500kWhの電気ができるので、一般家庭の8カ月分の電気を作ることができる。