[スマートグリッド実証実験の成果から今後を展望する]

スマートグリッド実証実験の成果から今後を展望する≪前編≫

― 4地域実証と東北8地域事業の内容を国際標準化へ―
2014/09/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

IEC への提案:国内スマートグリッド実証を反映する国際標準技術

先述したように、4地域実証では、スマートグリッドによる効率的なエネルギー利用を行う社会を現実にするためのさまざまな実証が行われている。一方、同時に、世界的にスマートグリッドが普及していくなかで、今後、日本国内で生まれた運営手法やビジネスモデルを国外に展開していく機会も増えていく。その際に重要となるのが、スマートグリッドを実現する技術に関して、日本ならではの特性を組み入れた標準規格を作成することである。 

 スマートグリッド技術の国際標準化は、現在、電気および電子技術分野の国際規格の策定を行うIEC(International ElectrotechnicalCommission、国際電気標準会議)のTC57(Technical Committees 57)において検討が進められている(図4)。

 技術の標準化を審議するには、まず、その技術がどのようなビジネスケースで、どのように使われるのかを示すユースケース(単純に「事例」という意味ではない)注1が検討される。 スマートグリッドにおける、需要家と電気事業者間のインタフェースを定めるTC57WG21(Working Group21)では、米国EISアライアンス注2からユースケースが提出されていた。これを受け、SGTECでは、スマートグリッドにおいて、デマンドレスポンスを行う際に必要となる技術について、上記4 地域での実証実験の調査を行い、スマートグリッドを実現するために必要となるユースケースを作成し、平成25(2013)年9月にTC57のWG21に提出した。

 国内の実証実験に基づいたユースケースの提出は、今後IECで審議されていくスマートグリッドにおけるデマンドレスポンスの技術の標準化について、日本ならではの特性を反映させるための素地が作られたことになり、大きな期待が寄せられている。


◆図4 出所
〔IEC各種資料より〕
 
▼注1
ユースケース:その技術が、実際にどのようなビジネスケースのなかで、どのような使われ方をするかということを、多くの人が理解しやすい形でまとめたもののことを指す。このユースケースをもとに、プロジェクトのエンジニアが、どのような機能や性能などが要求されるかをまとめていくもととなる。ユースケースの提出フォーマットについては、IECのPAS(Publicly Available Specification)の62559で規定されており、「①ユースケース」自体に加えて、そのユースケースの主体となる人や組織、装置などを表す「②アクター」と、そのアクターの間で交換される「③情報」という3つの要素から構成される。
 
▼注2
EISアライアンス:Energy Inforamation Standards Alliance、米国のエネルギー情報規格アライアンス。2009年6月設立。エネルギー管理システムや、スマートグリッド技術分野の製品やサービスを提供するアライアンス(米国カリフォルニア州)。
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