[スマートグリッド実証実験の成果から今後を展望する]

スマートグリッド実証実験の成果から今後を展望する≪前編≫

― 4地域実証と東北8地域事業の内容を国際標準化へ―
2014/09/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

4 地域実証から導き出されたユースケース

 今回、SGTECがIECに提出したユースケースは、SGTECが、4地域実証と東北8地域事業の、デマンドレスポンスに関する部分の調査から得たユースケースと、SGTEC 内で議論した結果を含めた提案となっている。ここではまず、4地域実証から導き出されたユースケースの一覧を表3にまとめて示す。
 
 これらのユースケースについて、EISアライアンスがIECに対して提出していたユースケースと比較し、EISアライアンスのユースケースに対応しないアクター(ユースケースの主体となる人や組織、装置など)と、定義されていない交換情報、すなわち、日本独自のアクターと交換情報を表4と表5に示す。
 
 
 
 
 ここで注目されるのは、ユースケースの中にアグリゲータ企業とのやりとりが含まれている点と、太陽電池や蓄電池などの装置がアクターとして登場している点である。この部分は日本のスマートグリッド環境に独特のものである。
 現在、スマートグリッドにおける技術の国際標準化に関しては、世界各国から集まったユースケースを検討し、審議を行う仕様を固めているところである。本当の意味での技術の国際標準化は、まだ数年かかると考えられる。
 ここまで、4地域実証の成果と、実証実験から導き出されたユースケースについて見てきた。国内の実証実験については、東北8地域における事業も行われており、この内容と成果については後編で説明する。また、8地域のうち、岩手県北上市の事業については、東日本大震災を被災した経験から生まれた、通常時と被災時のそれぞれに対応したエネルギーマネジメントの実証が行われており、これをもとにしたユースケースについても説明していく。
 4地域実証では、それぞれ異なった特性をもった地域での実証実験に基づく実践的経験と、SGTEC によるデマンドレスポンス技術の標準化という両側面において、大きな成果が得られた。今後、日本が2016年の電力の自由化に向けた準備を進めていくなかで、国内実証実験によってもたらされた経験と知見を活かした、より豊かなスマートグリッドの実現に期待したい。
 
(後編に続く)

◆表3 出所
〔電気学会 SGTEC資料より〕
 
◆表4 出所
〔電気学会 SGTEC資料より〕
 
◆表5 出所
〔電気学会 SGTEC資料より〕

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