[特集]

VPP・マイクログリッドで実現する「東松島市スマート防災エコタウン」

― CEMSで街の電力を最適制御し地産地消を実現 ―
2016/12/13
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

東松島市スマート防災エコタウンの事業配置

 図4に、「東松島市スマート防災エコタウン」における現地の事業配置図を示す。

図4 「東松島市スマート防災エコタウン」の事業配置

図4 「東松島市スマート防災エコタウン」の事業配置

赤色の線の枠内:東松島市所有の土地、その他は民有地
出所 「再エネを地域で活かし使う〜東松島市の挑戦〜」東松島市復興政策部復興政策課/一般社団法人東松島みらいとし機構、2016.11.21

 図4に示すように、

  1. 災害公営住宅(計85戸=戸建70戸+集合15戸。被災された住民用の市営住宅)と集会所のエリア
  2. 病院(ししど内科クリニック、わたなべ整形外科、うつみレディスクリニック、仙石病院)
  3. 公共施設(石巻運転免許センター)

で構成された防災エコタウンとなっているが、自営線PPS注7によって電力の供給が行われている。自営線PPSとは、新電力(PPS。ここではHOPEを指す)が、東北電力の配電網ではなく、東松島市が自分で構築した電柱や配電網(架空配電線。電柱に電線を架線したもの)を使用して電力を供給する形態であり、全国的にも珍しい形態となっている。

 電源関係は、太陽光発電(460kW≒400kW+9.1kW+49.9kW)をはじめ、大型蓄電池(480kWh)、非常用発電(バイオディーゼル注8:500kW)で構成されている。

 また、災害などで、東北電力からの系統電力が遮断された場合でも、同タウンに設置されている、図4の各種発電設備を組み合わせて、最低3日間は電力供給が可能となっている。さらに、大震災のように、長期にわたる停電の場合には、太陽光発電と蓄電池によって病院や地域の避難場所(集会所など)へ、最低限の電力を継続的に供給することが可能となっている。なお、図4に示す黒色の太い線は、東松島市が構築した自営線で、各施設には高圧(6,600V)で供給する配電線となっている。

 なお、夏場でカンカン照りの場合は、ほぼ太陽光発電だけでまかなえるが、日によって不足する場合には東北電力の送電線を介して、JEPX注9(日本卸電力取引所)などから購入している。平均すると50%程度をエコタウン内の電源でまかなっているが、最終的には地域内電源だけでまかない、地産地消を実現していくことをめざしている。

 平常時には、これらの電源とその不足分を、HOPEがJEPXなどから調達して運用している。


▼ 注7
PPS:Power Producer and Supplier、特定規模電気事業者。現在はわかりやすいように「新電力会社」あるいは「新電力」と呼ばれている。

▼ 注8
バイオディーゼル燃料:生物由来の油(例:ひまわり油、大豆油など)から作られるディーゼルエンジン用燃料の総称。バイオディーゼル燃料を使用することで、温室効果ガス削減が可能となる、地球にやさしい燃料。

▼ 注9
JEPX:Japan Electric Power eXchange、一般社団法人 日本卸電力取引所

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