トランプ新政権のエネルギー政策の概要
ここからは、公開情報注2を元にトランプ新政権のエネルギー政策がどのようなものになるのかを整理していく。
〔1〕他国に依存しないエネルギー
まず新政権でのエネルギー政策の概要は、政権移行チームがまとめたEnergy In-dependence(他国に依存しないエネルギー)注3というページに簡潔にまとめられている。Webページのタイトルのとおり、トランプ新政権では米国で利用するエネルギーは国内のエネルギー資源を最大限活用し、最新技術を利用することでエネルギー輸出国になることを明言している。
ここで、最大限活用するとしているエネルギー資源としては、従来型のエネルギー源と再生可能エネルギー源の両方であることを明らかにしている。
他の分野の政策でも述べているように、トランプ次期政権としてはこのような取り組みをすることで、何百万人もの新しい雇用を創出できる点を強調している。そのうえで、空気や水、生態系を保護することができる点も合わせて紹介している。
〔2〕オバマ政権による行政命令を撤回
このような取り組みを行うためにはオバマ政権中に出され、エネルギー資源開発の障害となっていたような行政命令を撤回することを述べている。この点については"rescind the job-destroying executive actions under his Administration"(雇用を破壊していたオバマ政権による行政命令を撤回する)という強い言葉で表現している。
このような発言を踏まえて、名指しで撤回について言及されているオバマ政権による行政命令としては、2013年に出され5兆ドルを費やしたとされているClimate Action Plan(気候変動行動計画)や2015年に出されたClean Power Plan(クリーンパワー計画)などの温暖化対策につながるものがある。
トランプ新政権による具体的なエネルギー関連政策
ここまで挙げたような大きな方向性を元にして、トランプ氏の公式サイトでは、より具体的なエネルギー関連政策注4が掲げられている。それらをまとめたものが表2である。
表2 トランプ次期政権による具体的なエネルギー関連政策
出所 Energy | Donald J Trump for Presidentを元に著者作成
〔1〕規制を撤回することで、エネルギー自給率を高める
資料にはさまざまなことが書かれているが、基本的なコンセプトとしては再生可能エネルギーにはこだわらず、さまざまなエネルギー源を積極的に活用していくことである。そして、再生可能エネルギー源以外の資源、つまり石炭や天然ガス、シェールガスなどに関する規制を撤回することで、エネルギー自給率を高めると同時に、雇用創出などの経済効果も追求していくことがトランプ新政権の目指すところだと言える。
〔2〕並行して求められる技術開発
それでは、トランプ新政権が発足すればこのような政策が一気に現実のものになるのかというと、話はそう単純ではない。このような政策を進めるために必要な技術開発も並行して進めていく必要がある。
また、これまでの政策とは大きく変わる内容が、スムーズに議会を通過しない可能性も想定される。
これらの点から、現実的には新政権発足後の政治情勢を見ながら影響を判断していく必要がある。
▼ 注2
記事執筆にあたってはトランプ氏の公式サイトであるMake America Great Again!|Donald J Trump for Presi-dentおよび政権移行に関する情報がまとめられているGreatAgainの情報を主な情報源としている。
▼ 注3
https://greatagain.gov/energy-independence-69767de8166#.wavh7y7bf
参照。