[クローズアップ]

「SIGFOX」によるLPWAサービスが日本でもスタート!

― KCCSがIoTに特化し年間100円の通信料金で実現へ ―
2017/02/05
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

4つの壁を突き破るSIGFOX

〔1〕コスト(通信料金など)の課題

 1つ目は、通信料金などのコストの課題である。

 現在、モバイル通信(セルラー)事業者から3G/LTEなどのセルラーサービスが提供されているが、高速・長距離通信は可能であるものの通信料金が高い。例えば、MVNOなどからセルラーで安い料金プランが提供されているが、それでも1つのデバイスを接続するために月額200〜300円かかるのが現状である。一方、近距離無線通信として普及しているWi-Fiなどでは、アクセスポイントの設置などのコストがかかる。

 これに対してSIGFOXでは、契約回線(接続デバイス数)が100万回線以上で、1日の通信回数が2回以下の場合の契約において、「1年間で1回線100円程度」の通信料金で利用できる。このような低価格になれば、これまでコストの問題からネットワークにつながなかったセンサーや、他の多くのIoTデバイスも容易につなぐことができるようになる。

 KCCSでは、1日の通信回数が50回以下で、契約回線(接続デバイス数)が数万回線となるケースが最も多くなると見ており、その場合には、1年間で1,000円/回線を切る通信料金で提供できるようになるなどの検討が進んでいる。

〔2〕消費電力(省電力化)の課題

 2つ目は、IoTデバイス用の電源の課題である。

 IoTを実現しようと商用電源を新たに敷設するとなるとコストがかかる。また電池を使用する場合、1〜2カ月程度しかもたないのではユーザーは魅力を感じない。そこでSIGFOXでは、電池が5~10年以上もつように省電力化した通信モジュールを開発した。これによって、通信のために必要であった商用電源の設置が不要になるとともに、家庭や工場の外にIoTデバイスを設置しても容易に通信が可能となる。

〔3〕導入時の課題

 3つ目は、デバイスが通信を行う場合、新たにSIMカードが必要になったり、Wi-Fiではデバイスとアクセスポイントを接続するための設定が必要となったりするなど、シンプルに使えないという導入に関する課題である。

 このような手間は、最終的にはユーザーのコストにかかってくるが、SIGFOXでは、出荷時から固有のデバイスID(デバイス識別子)を付与しているので、そのIDのまま全世界共通で使用可能となっている。

〔4〕グローバル展開の課題

 4つ目は、グローバルな展開についての課題である。

 低コストで利用できるネットワークにはWi-FiやBluetoothなどのほかに、さまざまなタイプのLPWAも登場しているが、SIGFOXでは、30〜50kmの長距離通信が可能である。同時に、前述したように、日本全国あるいは世界のどこに移動しても、SIGFOXクラウド経由で付与されたデバイスID(識別子)で使えるという利点があり、グローバル展開の課題は解決できる。

 なお、SIGFOXクラウドについては、Web API(REST API)でアクセスすることによって、すでに各種デバイス(センサー)などからクラウドに収集されたデータを取得することができる。また、コールバックという機能によって、各種デバイスからのデータがクラウドにアップされた後、その都度自動的に顧客のサーバにそれらのデータを転送することも可能となっている。

 KCCSでは、2018年3月までに国内の主要36都市への展開を行い、その後全国展開を行う計画を推進している。一方、SIGFOXではすでに世界29カ国でサービスを展開しているため、これらの国際ネットワークとのローミングによって、グローバルなビジネス展開も可能となっている。このため、顧客は自身で国際IoTネットワークを構築する必要がなく、日本全国あるいは全世界で共通のIoTネットワークが使えるようになる。

KCCSのビジネスモデル

 図3は、KCCSのSIGFOXネットワークサービスに関するビジネスモデルである。図3からわかるように、ビジネスモデルは、SIGFOX、KCCS、デバイスメーカー、IoTサービスプロバイダ、顧客(エンドユーザー)による、SIGFOXエコシステムを基本としている。

図3 KCCSのビジネスモデル(SIGFOXエコシステム)

図3 KCCSのビジネスモデル(SIGFOXエコシステム)

出所 黒瀬 善仁、「KCCS IoT Conference」資料(京セラコミュニケーションシステム株式会社)、2016年12月13日

 まず、KCCSは、SIGFOX社から基地局とクラウドサービスの提供を受け、それをベースに、日本全国でネットワークを構築する。一方、デバイスメーカーからデバイス(通信専用モジュールなど)を提供されたIoTサービスプロバイダは、KCCSのサービスプランに合わせて、IoTサービスプロバイダ独自のサービスをそれぞれの顧客に提供する。そのサービス料金は、IoTサービスプロバイダが自由に設定できる。

 KCCSによるSIGFOXネットワークサービスは、日本では次のようなスケジュールで展開される予定となっている。

(1)2017年2月:東京都内23区より順次サービスを開始

(2)2017年3月:川崎市・横浜市・大阪市でサービス展開

(3)〜2018年3月:政令指定都市を含む主要36都市でサービスを展開

(4)以降、順次全国へ展開

 以上、KCCSのビジネスモデルを見てきた。同社は売上として、2020年度までに累計接続デバイス数1,500万台、年間売上高100億円を目指している注7


▼ 注7
http://www.kccs.co.jp/release/2016/1109/

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