[特集]

世界のDR活用の現状と展望、VPPへの展開

― 価格入札・再エネ普及時代に主流となってきた負荷抑制型 ―
2017/05/11
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2017年4月からネガワット市場が創設され、日本でもデマンドレスポンス(DR:Demand Response、電力の需給管理)への関心が急速に高まっている。電力の需要量と発電量(供給量)のバランスをとり、制御するDRは、各国で急速に進む再生可能エネルギー(以下、再エネ)の増大とともにその重要性が注目され、世界共通の関心事となっている。
ここでは、DRが、なぜ世界の電力市場に取り入れられるようになってきたのか、また米国やフランスにおけるDRの取り組みや、日本の動きを紹介する。さらに、DRとVPP(仮想発電所)の関係も見ていく。
なお本記事は、関西電力株式会社 お客さま本部 部長 西村 陽(にしむら きよし)氏の講演(注1)をベースに解説したものである。

先進的な米国のDRへの取り組み

〔1〕コンバージ社のNOCからDRを発動

 世界でも早い時期から電力の自由化を推進している米国は、最もデマンドレスポンス(DR)の導入が進んでいる。例えば米国では、ビッグ3ともいわれる、

  1. マサチューセッツ州ボストンのエナーノック(EnerNOC)
  2. ジョージア州アトランタのコンバージ(Comverge)
  3. メリーランド州ボルチモアのコンステレーション(Constellation)注2

などのDR用のネットワークオペレーションセンター(NOC:Network Operation Center)が稼働している注3

 写真1は、世界で最も進んでいるNOCの1つといわれている、米国コンバージ(Comverge)社のNOC内のDR制御用監視パネル(画面)の例である。

写真1 コンバージ(Comverge)社のNOC(ネットワークオペレーションセンター)

写真1 コンバージ(Comverge)社のNOC(ネットワークオペレーションセンター)

出所 西村 陽、「国内外のDR活用の現状・展望とVPPへの展開」、平成29年電気学会全国大会、2017年3月16日

 NOC画面の左側には、テキサス州のISO(Independent System Operator、独立系統運用機関)であるERCOT注4(テキサス電力信頼度協議会)の系統運用の状態が、真ん中にはPJM注5の系統運用の状態が表示されている。

 コンバージ社のNOCは、ISOからの系統指示に対応して、ISOと契約している多くの顧客の電力需要の削減指示(DRの発動)を行うなど、削減量を調整する「マイナス側(ネガワット)の給電指令所」のようなものである。これによって、瞬時に電力の需要と供給を一致(同時同量)させている注6

〔2〕NOCはネガワットの中継所

 このように見ていくと、NOCはちょうど、日本の旧電力会社10社注7の中央給電指令所に似ている。

 中央給電指令所では、電力の需給に応じて発電所を稼働(発電:メガワット)させて同時同量を実現しているが、コンバージ社のNOCの場合は、契約している各系統運用者の指令に応じて、顧客と系統運用者間の電力の需給調整(DR)を行う「マイナス電力(節電:ネガワット)の中継所」の役割を果たしている。


▼ 注1
電気学会全国大会(於:富山大学、2017年3月16日)における講演。「国内外のDR活用の現状・展望とVPPへの展開」(S3 ネガワット取引制度創設とバーチャルパワープラント構築に向けて)

▼ 注2
コンバージとコンステーレーションは、現在合弁会社を設立。

▼ 注3
EnerNOCComvergeConstellation

▼ 注4
ERCOT:Electric Reliability Council of Texas、テキサス電力信頼度協議会。アーコット。

▼ 注5
PJM:米国北東部地域における独立系統運用機関(ISO)であり、かつ卸電力市場の管理などを行う機関である。PJMの対象エリアは、ペンシルバニア、ニュージャージー、メリーランド、バージニア、デラウェアの5州、およびワシントンD.C.などである。

▼ 注6
発送電分離(発電・送電の分離)が行われている米国では、送電網を管理する者は系統運用者といわれ、米ISOとRTOがある。
ISO:Independent System Operator、独立系統運用機関(FERC※:Order No.888で規定)、送電網の運用・管理を行う電力会社から独立した組織。
RTO:Regional Transmission Organization、地域送電機関(FERC:Order No.2000で規定)。ISOを、州をまたがって広域化した組織。
※FERCはFederal Energy Regulatory Commissionの略。米国エネルギー省米国連邦エネルギー規制委員会。

▼ 注7
改正電気事業法により2016年4月から一般送配電事業者と呼ばれている。北海道電力、東北電力、東京電力パワーグリッド、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10者。現在、この一般送配電事業者は小売電気事業や発電事業を兼営できる。しかし、改正電気事業法によって、2020年4月からは送配電部門の分社化を義務付ける「発送電分離」が実施されるため、兼営が原則禁止されることになっている。

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