米国エネルギー省(DOE)のエネルギー政策
〔1〕エネルギー省(DOE)の位置づけ
ここで、米国のエネルギー政策を見てみよう。
図1に示すように、米国のエネルギー政策は、大統領府の下に位置づけられるDOE(Department of Energy、エネルギー省)によって推進されている。DOE傘下には、ARPA-E(Advanced Research Projects Agency Energy、エネルギー高等研究計画局、2009年設立)が設立されており、民間からの支援が得にくいリスクの高い新規プロジェクトへの資金調達・支援などが行われている。また、傘下にはロスアラモスやサンディアなどの国立研究所などを含む32の研究所(国立研究所は21)などが所属している。
図1 米国政府のエネルギーを中心にした科学技術行政の機構図(部分)
出所 国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発戦略センター(CRDS)「研究開発の俯瞰報告書:主要国の研究開発戦略(2017年)」
さらに、このDOE内には、DOE内の独立規制機関であるFERC(Federal Energy Regulatory Commission、連邦エネルギー規制委員会)が設置されており、電力およびガス事業に対する規制・監督が行われている。
〔2〕米国の発電量は世界第2位
米国における電気使用量は増加を続けているが、その成長率は過去の平均値よりも低くなってきていることが大きな特長の1つである。
毎年発行されるBP統計注7によると、2015年における米国の発電量は、中国の5,810.58
TWh(5.8兆kWh)に次いで世界第2位の4,303TWh(4.3兆kWh)であり、日本の1,035.5TWh(1兆kWh)の4倍強に相当する規模となっている注8。
〔3〕米国の電力事業者数は3,300社
米国の電力会社を経営形態別に見ると、
図2に示すように、電力市場の自由化を背景に、事業者総数で3,300社を超え(日本の登録小売電気事業者数は2017年8月7日現在で414事業者)、総販売電力量は4.05兆kWh注9となっている。
図2 米国の電気事業
出所 一般社団法人 海外電力調査会(JEPIC)「米国電気事業の特質」、
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/wp-content/uploads/2016/11/20161123-1.pdf
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-04-01-06
米国の電気事業者は、各州政府や連邦政府機関の規制下に置かれ、所有形態によって次の5つに大別されている(表2)。
表2 米国における所有形態の電気事業者の特色
出所 一般財団法人 高度情報科学技術研究機構ホームページ、2017年1月をもとに編集部作成、
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/14/14040106/01.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-04-01-06
- 私営電気事業者(IOU:Investor-Owned Utility、民間電力会社)
- 連邦営電気事業者
- 地方公営電気事業者
- 協同組合営電気事業者
- パワー・マーケッター
企業数では、地方公営事業者(POU:Publicly Owned Utilities)が59%(約2,000社)と多いが、大手電力会社のほとんどは私営事業者(6%、約200社)であるため、私営事業者の販売電力量のシェアは大きく、48%(約2兆kWh)を占めている。また、パワーマーケッターという電力の取引だけを行う事業者も発生している。
このように、電力自由化に伴って、米国の電力供給体制は複雑化している。
▼ 注8
https://www.bp.com/content/dam/bp/en/corporate/pdf/energy-economics/statistical-review-2017/bp-statistical-review-of-world-energy-2017-full-report.pdf
BP Statistical ReviewofWorld EnergyJune 2016
▼ 注9
統計によって多少の違いはあることに留意。