米国の発電電力量に占める電源別構成比
〔1〕1950〜2016年の発電電力量の電源別構成比
図5は、米国における1950〜2016年の発電電力量の電源別構成比(%)の推移を示したものである。図5からわかるように、これまで長期にわたって石炭火力発電が最大の電源となっていた。しかし、1990年頃から石炭よりもクリーンで安価な天然ガスの利用が拡大し、ガス火力発電の電力量が2016年には33%に達し、石炭火力発電と逆転している。
この背景には、石炭火力の場合CO2排出規制の強化に伴って、減少基調に移行していることが見てとれる(ただし、価格の推移は流動的なため注意する必要がある)。
〔2〕米国におけるエネルギー資源別の発電量の推移と予測(2016年以降)
図6は、米国における多様なエネルギー資源を用いた発電量(kWh)の推移について、2016年までの実績と2016年以降2050年までの予測を示している〔注:前出の図5は電源別の構成比(%)の推移であることに注意〕。
図6 米国におけるエネルギー資源別の発電量の推移と今後の予測
図6から、2016年以降は、次の3つの大きな流れが見てとれる。
- 天然ガス発電と再エネ発電が急速に普及すること。
- 石炭火力発電と原子力発電が減少基調に入ってくること。
- 石油火力発電は限りなく0に近づいていくこと。
先進的なニューヨーク州やカリフォルニア州
次に、米国で先進的な自治体のエネルギー導入の動きを見てみよう。
すでにクリーンな再エネの導入に舵を切ったカリフォルニア州やニューヨーク州などでは、温室効果ガス(CO2)排出量の削減(パリ協定)の実現に向けて、さらに積極的な再エネの導入を推進している。例えば、先進的なニューヨーク州では、2014年から「REV 2030 Goals」(エネルギービジョンの改革2030)注10を掲げ、2030年までに次の目標を推進している(図7)。
図7 ニューヨーク州のREV 2030 Goalsビジョン
- 1990年レベルから温室効果ガス排出量を40%削減する(2050年までに80%削減)
- 発電される電力の50%は再エネ源(太陽光、風力、水力、バイオマス等)とする
- 2012年レベルから建物のエネルギー消費量を23%削減する。
さらに、本誌(2017年5月号)でも紹介したように、ニューヨーク州のブルックリン地区などでは、ブロックチェーンネットワークを構築して、トランザクティブ・エネルギー注11の実証が行われている。
また、カリフォルニア州においては、2030年までに再エネのシェアを50%(可能な限り100%を目指す。2016年末では25%)、電力会社には1,325MW(1.325GW)のストレージ(蓄電)装置の導入を義務化するなど、パリ協定の実現に向けて加速した取り組みが行われている。
さらに孤島のハワイ州は、価格変動の激しい石油などを米国本土や産油国から調達して発電するよりも、無料で調達できる風力や太陽光を利用する再エネ発電を、2040年までに100%にする計画を推進している。
▼ 注10
REVは、電力系統(Central Grid)とローカルでクリーンな分散電源(Microgridを含む)を組み合わせて統合したエネルギーネットワークをベースに実現される。
REV 2030 Goals :Reforming the Energy Vision 2030 Goals、
https://rev.ny.gov/ 、
https://energyplan.ny.gov/
▼ 注11
トランザクティブ・エネルギー:取引可能エネルギー。消費者同士でも電気の取引が可能な仕組み。