5Gでオフィスが「ボールペン工場」へ
QRコードが活躍
2017年11月29日からビジネスを始めているデンソーウェーブ(本社:愛知県知多郡)と、デンソー(本社:愛知県刈谷市)は、製品開発を行った人協働ロボット「COBOTTA」(コボッタ、表3)を利用して、手軽にボールペンの生産ラインを実現できるデモンストレーションを行っていた。これは、複数台のCOBOTTAとデンソーウェーブのQRコード技術を融合させて実現した。
項目 | 内容 |
---|---|
軸数 | 6軸(アーム部)+1軸(電動バンド部)※1 |
電動モーター/ブレーキ | 全軸ACサーボモーター/1,2,3,4,5軸ブレーキ付 |
アーム長 (第1アーム+第2アーム) |
342.5(165+177.5)mm |
定格可変質量 (最大可搬質量) |
0.5kg(手首下向き時±10度以内の場合は0/7kg) |
位置繰り返し精度 | ±0.05mm |
合成最大速度 (ツール取付面中心) |
工場出荷時 500mm/s(100~1500mm/sで最大速度を設定可能) |
保護等級 | IP30 |
ソフトウェア | 標準版:COBOTTA専用ソフトウェア OSS版:なし(ユーザー側にてLinuxなどをインストール可能) |
電源仕様(ACアダプタ) | 入力:単層 AC100~240V,出力:DC24V(約180W) |
外部信号 | 専用入力:8点/専用出力:8点 汎用入力:8点/汎用出力:8点 外部非常停止用接続 × 1ch |
外部通信 | Ethernet ×1ポート、USB ×2ポート、VGA出力×1ch |
本体質量 | 約4kg |
安全仕様 | ISO/TS 15066、ISO 13849-1:2015 PL d (※2 第三者認証機関による認証取得予定) |
※1 オプション
※2 周囲温度一定条件下
出所 「COBOTTA_DENSO?201712」より
写真3 名前入りの3色ボールペンを製造する「COBOTTA」(中央)
出所 編集部撮影
写真4 入力情報がQRコード化され、そのシート(紙の出力)が来場者に渡される
出所 編集部撮影
写真5 来場者にボールペンを手渡すCOBOTTA
出所 編集部撮影
5Gの安定した遅延時間とインダストリー4.0
このデモンストレーションのポイントは、製造工程において短い期間で投資を抑えて場所を問わずに生産ラインを実現できることである。コントローラを内蔵しながらも重量は約4kgと軽量で、手軽に持ち運びできる。小型・軽量ボディのCOBOTTAを用いることで、安全柵を必要としない人協働ロボットとして動作が可能となっている。
本質安全と機能安全の両面からアプローチして安全性を担保し、どこでも持ち運んで、素早くセットアップできる。また、直感的に操作ができるGUIによって、短時間で作業を自動化することを訴求している。
なお、COBOTAは、一般社団法人 日本ロボット工業会 ORIN協議会で検討されている「Open Robot Interface for Network」(http://www.jara.jp/e/orin/PressE9.pdf)をベースにしているので、COBOTTAへの搭載OSやクラウド連携などについてはオープン指向にある。
5Gの低遅延な通信品質の安定化がカギ
想定される用途には、簡単な組み付け作業や仕分け作業、検査といった労働集約型の小さな作業を行うことが見込まれている。急な生産品目の変更や増産対応などで人手が足りなくなったとき、作業者の隣にCOBOTTAを配置して仕事を手伝ってもらうなど、COBOTTAを導入することで生産ラインをフレキシブルに構築することが可能になる。
今後、5Gがインダストリー4.0の世界でも利用される場合は、いくつか課題もある。例えば、COBOTTAが想定している中小規模の生産ラインの確立において完全無人化を考えた場合、これらの操作をクラウド環境から行う場合には、安定した通信インフラの品質が必要になる。
インダストリー4.0では、ロボット制御をクラウド環境で行う際、ロボットのアームの稼働操作を見込んだ時間確保が求められるという。そのため、5Gで検討されているリアルタイムに近い、安定した遅延時間(1~5ms程度)が求められている。
このような、高速かつ低遅延な通信品質が担保されると、5Gを利用したロボット制御も容易になるので、新たなソリューションモデルの実現へ向けて期待がもてる。