水素協議会(Hydrogen Council)の結成
写真1 COP23会場で開催された第2回水素協議会の年次イベントで発言するブノワ・ポチエ(Benoît Potier)氏(エア・リキード会長兼CEO)
出所 http://hydrogencouncil.com/video-2nd-annual-ceo-event-at-cop23/
このような背景のもと、2015年のパリ協定で合意された「(気温上昇を)2℃以下に抑える」という大きな目標の達成(気候変動の目標達成)を目指して、エネルギー・運輸・製造業の世界的なリーディングカンパニー13社で構成される「Hydrogen Council」(水素協議会)が発足した(スイス現地時間で2017年1月17日、表2)。この水素協議会は、低炭素化社会を目指し、使用時にCO2を発生しないクリーンな水素を利用した新エネルギーへの移行に向けたビジョンと長期的な目標を提唱する、世界初のグローバル・イニシアチブ(活動体)である。
表2 水素協議会のプロフィール(敬称略)(2018年2月現在)
水素協議会の第1回の会合はスイス・ダボスで開催され、表2に示す13社のCEOならびに会長らが参加した。その後、参加メンバーが増え、2017年12月には、表3に示す28社が参加している。
表3 水素協議会(Hydrogen Council)の メンバー(28社。2017年12月時点)
出所 https://www.iges.or.jp/files/research/climate-energy/PDF/cop23/20171220/3_METI.pdf
水素協議会:水素市場の拡大とそのロードマップを発表
〔1〕水素協議会:水素の7つの役割を明確化
このような低炭素化社会への移行を目指して設立された水素協議会は、すでに2017年1月の第1回会合において、低炭素社会への移行に向けて、水素の果たす役割を示す“How Hydrogen empowers the energy transition”(いかに水素は将来エネルギーへの移行を後押しするか:全22ページ)」と題するレポートを発表した注5。このレポートでは、水素に関する7つの役割(次項で解説)などが明確化された。
〔2〕水素の7つの役割と水素エネルギー移行へのロードマップ
図4 Hydrogen, scaling up(水素市場の拡大)の表紙
出所 http://hydrogencouncil.com/wp-content/uploads/2017/11/Hydrogen-scaling-up-Hydrogen-Council.pdf
さらに、水素協議会は、第1回会合で発表した水素に関するビジョンをより明確にするため、マッキンゼー・アンド・カンパニーの協力を得て、2017年11月に、世界初となる、水素利用についての具体的なビジョンとして“Hydrogen, scaling up”(水素市場の拡大)というタイトルの調査報告書(全80ページ。2017年1月のレポートの改訂版)を発表した注6(図4)。
この調査報告書は、2017年11月にドイツ・ボン(COP23の会場)で開催された第2回水素協議会CEO級会合で公開された。同報告書では、水素の7つの役割が次のように位置付けられている(図5)。
図5 水素協議会における水素の7つの役割
出所 http://hydrogencouncil.com/wp-content/uploads/2017/11/Hydrogen-scaling-up-Hydrogen-Council.pdf
【水素の7つの役割】
①大規模な再エネの統合と発電が可能となる。
②セクター(各グループ)や地域をまたいだエネルギーの分配が可能となる。
③システムの信頼性を高めるためのバッファーとして機能がある。
④運輸部門の低炭素化を実現する。
⑤産業用エネルギーの低炭素化を実現する。
⑥回収炭素を水素と合わせて工業原料化が可能となる(二酸化炭素のメタノールやアンモニアへの変換など)。
⑦家庭や地域の暖房システムの低炭素化を実現する。
▼ 注5
How Hydrogen empowers the energy transition、Hydrogen Council January 2017
▼ 注6
トヨタ自動車、Global Nerwsroom、2017年11月14日、
https://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/19712845
http://hydrogencouncil.com/wp-content/uploads/2017/11/Hydrogen-scaling-up-Hydrogen-Council.pdf