日本における自動車の利用パターン
〔1〕自動車は1日65分しか走っていない
現在、自動車がどういう使われ方をしているかを見てみよう。図8は、実際の調査注6に基づいて自動車の利用パターンの曲線を描いた図である。
図8 日本における自動車の利用パターン例
出所 太田 豊「電気自動車と電力システムの統合と東京都市大学でのキャンパス実証」、2018年4月10日
これは、国土交通省が自動車の使用状況に関するアンケート調査をベースにして、太田准教授らがまとめた結果である。アンケート総数は約2万3,000件(台)であったが、そのうち5,000台の車はまったく使用されていない状況であった(したがってアンケートの分析は1万8,000件で行われた)。
使用している自動車については、図8に示すように夜間はほとんど車庫にあるが、
- 青色:9〜17時に住宅(家庭)の車庫にいる車の台数は5,000台程度
- 赤色:9〜17時に道路を走行している車の台数は2,000台程度
- 緑色:9〜17時に職場の駐車場にいる車の台数は8,000台程度
この調査結果から、日本の乗用車の1日の平均走行時間は65分、1日の平均走行距離は23.3kmとなった。つまり1日24時間のうち1/24に当たる1時間程度しか走行していないことがわかった。23/24は、家庭あるいは職場に駐車していることもわかった。
〔2〕自動車は定置型蓄電池としても利用可能
アンケート調査結果を見ると、家庭や職場で駐車しているときの自動車は、定置型蓄電池として使用できるので期待度が高い。
結論からいうと、夜間は風力発電が余るので家に駐車している自動車に蓄電できる。昼間は、太陽光発電によって、家庭と職場に駐車している自動車に充電することができる。さらに、まったく使用していない5,000台の車も定置型蓄電池として使えるのである。
このような背景から、例えば図9に示すように、日産自動車や三菱電機、あるいは積水化学工業などのハウスベンダーからさまざまな事例が公表されている。
図9 電気自動車の使用例(Vehicle to Home、Semi-off-Grid、Off-Grid)
Semi-off-Grid、Off-Grid:注7、注8を参照。
出所 太田 豊「電気自動車と電力システムの統合と東京都市大学でのキャンパス実証」、2018年4月10日
日本では、すでに日産のLEAFと三菱のi-MiEV(アイ・ミーブ)合わせて、9〜10万台程度のEVが走っており(2017年末)、すでにV2H(Vehicle to Home、自動車から住宅への電力供給)、セミオフグリッド注7、オフグリッド注8などの形態で、7,000セット程度が図9のように実用化され、普及が始まっている。
▼ 注6
国土交通省が愛知県内の交通調査で行った調査(2005年)に基づくもの。国土交通省は何年かに一度、交通流の評価のために交通調査を行っており、太田准教授らはそのデータを借りて評価を行っている。
▼ 注7
セミオフグリッド(Semi-off-Grid):太陽光発電と蓄電池を所有することで、電気料金契約を基本料金を極端に低減させたり、バックアップ契約にしたりとすることで、電力エネルギーの自給自足率を高める。逆に、蓄電池によるアンシラリー・サービスを電力会社に提供する際に電力システムと接続することも含まれる。
▼ 注8
オフグリッド(Off-Grid):太陽光発電と蓄電池を所有することで、電力会社からの電力供給を受けずに、電力エネルギーを年間を通じて完全に自給自足する。