[加速する電気自動車(EV)と電力システムの融合]

加速する電気自動車(EV)と電力システムの融合《前編》

― 「走る蓄電池」はIoT/再エネ時代のキーテクノロジーとなるか ―
2018/05/01
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

IoT/再エネ時代を迎え、次世代電力システムの新しい流れが見えてきた。それは、電気自動車(EV)と電力システムの融合である。パリ協定(COP21、2015年)以降、世界各国でEVへのシフトを加速させている中で、政府は新戦略を検討するため、「自動車新時代戦略会議」をスタートさせた。こうした流れを背景に、新しい電力システムを支えるキーテクノロジーとして低価格化・大容量化が進む「蓄電池」が注目され、EVと電力システムの融合が浮上し、現実味を増してきた。
ここでは、「EVの蓄電池を系統電力の目的に利用するとことを重視」して国際的にも活発な研究活動を展開している、東京都市大学 工学部 電気電子工学科 准教授の太田 豊(おおた ゆたか)氏への取材をもとに、最新の内外の動向と日本の現状について、前編と後編でレポートする。

「自動車新時代戦略会議」がスタート

 政府(経済産業省)は、パリ協定(COP21)以降、世界各国で電気自動車(EV:Electric Vehicle、以降EV)へのシフトが加速されている中で、日本が世界のイノベーションをリードし、地球温暖化や交通渋滞などの問題解決に向けた戦略を検討するため、「自動車新時代戦略会議」を新たに設置し、その第1回会合が2018年4月18日に開催された注1

 現在、自動車の世界は、IoTおよびAIの登場や、地球温暖化に伴う気候変動対策も含めて、ガソリン車からEVへの歴史的な大転換時代を迎えている。

 図1は、CASE時代とも言われる、次の4つの大きな国際的な環境変化を示している。

図1 クルマの未来は大きく変わる 〜 自動車新時代の到来

図1 クルマの未来は大きく変わる 〜 自動車新時代の到来

出所 経済産業省「自動車新時代戦略会議(第1回)資料」平成30(2018)年4月18日

  1. ツナガル(Connectivity=IoTとの連携)
  2. 自動化(Autonomous、自動運転車)
  3. 利活用(Shared&Service、カーシェアリング)
  4. 電動化(Electric、電気自動車)

 こうした変化の中で、自動車やモビリティに関わる産業や社会の姿も大きく変わろうとしている。当然のことながら、日本の自動車産業においても、競争力を高め、世界のイノベーションをリードし、環境や渋滞などの問題解決に積極的に貢献していくことが重要となってきた。

 そのために、「自動車新時代戦略会議」では、国際的なトレンド見すえたうえで、長期的なゴールを示し、重点的に取り組むべき政策の方向性を明確にしていくことが求められている。

 現在、IoT/AIの波は車の世界にも到来し、スマートフォンの急速な普及と相まって、クラウドとも連携した多様なモビリティサービスが提供されるようになってきた。

 特に、大容量の蓄電池を搭載しているEVは、エネルギーの面から図2に示すようなV2H(Vehicle to Home、EVから家庭への電気の供給)、V2G(Vehicle to Grid、EVから電力系統への電気の供給)などが注目され、実用化され始めている。

図2 「つながるクルマ」とモビリティサービスの新展開

図2 「つながるクルマ」とモビリティサービスの新展開

マルチモーダルP/F:複数の交通機関(自動車や鉄道、飛行機、船舶など)を連携させて、効率的な輸送体系や、良好な交通環境の実現を目指す交通プラットフォーム(P/F)
出所 経済産業省「自動車新時代戦略会議(第1回)資料」平成30(2018)年4月18日

 また、図3に示すように、コスト面を見ても、電気を貯める家庭用蓄電池システムの場合(EV用は後述)、年度ごとの目標価格は、現在1kWh当たり20万円前後のものが、2020年にはその半分以下の6〜9万円程度に低下すると予測されている。

 このような家庭用蓄電池の技術革新に伴う低価格化は、EVの分野にも大きな影響を与え、大型の蓄電池を安く搭載し活用できる時代が到来している。


▼ 注1
http://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180330010/20180330010.html
http://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180330010/20180330010-1.pdf

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