[特別レポート]

再エネ時代に交流(AC)の必然性はなくなったか?

― 直流380V給配電システムと国際標準化の最新動向 ―
2018/07/01
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

直流配電システムの海外の展開の事例

次に、直流配電システムについて海外の展開の事例を紹介する。

〔1〕取り組み事例①:ドイツ

ドイツの配電器具メーカーであるバッハマン(Bachmann)社(ドイツ・シュトットガルト)は、本社ビルの中にDC380V仕様のサーバルームを使って、自社の業務用の処理をすべて直流で行っている。このような取り組みは、欧州では高く評価されており、2016年にドイツ国内のデータセンター関係のアワードを受賞した。

〔2〕取り組み事例②:韓国

韓国電力は、2010年に、電力事業用に配電網をLVDCに置き換える検討と実証をスタートさせており、2019年の実用(商用)化を目指している。

実用化に向けたさまざまな検討がなされているが、例えば韓国電力内の1つのR&Dセンターでは、直流検証用施設を準備して各種評価を実施している。また、韓国内の小島の一部を直流配電区間にした実証もすでに進められている。この事例は、韓国内の配電網への適用以外に、海外展開も視野においた輸出向けのパッケージソリューションの戦略としても位置づけられている。

〔3〕取り組み事例③:中華人民共和国

中国の上海に拠点を置く上海電器科学研究院からの報告によると、中国では、高圧直流(HVDC)送電システムが20カ所以上、総容量110GW、総延長2万5,000kmの直流送電網という大規模な敷設が整備されている。

中国国内の次のターゲットは低圧直流(LVDC)側、すなわち需要側である。これを実現するため、太陽光発電(PV)の分野、ICTの分野、電気自動車(EV)を含む交通分野の効率化を目指した低圧直流(LVDC)の導入を、脱炭素化の観点からも推進している。

上海電器科学研究院の報告によれば、さまざまな直流適用の分野がある中でも、まずICT分野が牽引しながら、それらの実績をベースにほかの分野にも展開していくというパラダイムとなっている。2020年までに、これらの低圧直流の市場を中心に、日本円に換算して、約3.4兆円のLVDC市場になると見られている。

今後の展開:日本で国際的な直流技術会議も開催へ

ICT分野で世界的に導入が進んでいる直流方式であるが、さらにスマートグリッド/マイクログリッドや再エネ時代を迎えて、太陽光パネル(PV)や電気自動車(EV)、蓄電池などが普及し、スマートホームやスマートビルなどの登場によって、DC380VからDC48V、DC12Vなどを駆使する直流システムが、一般家電機器を含む幅広い分野までにも市場を拡大しようとしている。

その新しい流れは、先進諸国だけでなく未電化地域を含む開発途上国においても活発化してきた。このような新しい国際的なダイナミックな流れに乗り遅れないよう、日本も積極的に取り組むことが強く求められるようになってきている。

そこで、IEEE主催の国際的な直流技術会議注3を、2019年5月に日本の島根県松江市「くにびきメッセ」で開催することが決定された。、スマートグリッドやマイクログリッドをはじめ、各種産業応用・システム、さらにデバイスや基礎、太陽光、電気自動車なども含めた幅広い分野における「直流」のトピックスが議論されることになり、その成功に向けた取り組みに期待が寄せられている。


▼ 注3
第3回IEEE ICDCM 2019,ICDCM:International Conference on DC Microgrid(直流マイクログリッド国際会議)。米国、ドイツに続き3回目となる、隔年開催の直流技術全般に関する国際会議。主催:IEEE Power Electronics Society, Power & Energy Society。期日:2019年5月20〜23日。会場:島根県松江市くにびきメッセ。協賛:電気学会 産業応用部門、電気設備学会、電子情報通信学会 通信ソサイエティ。

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