[特集]

福島県相馬市のスマートコミュニティ事業戦略とそうまIHIグリーンエネルギーセンター

― 再エネの余剰電力を最大活用して地産地消をめざす ―
2018/08/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

スマートコミュニティ事業の実施場所

 図4に、スマートコミュニティ事業の実施場所(事業実践エリア)を示す。

 相馬市の北東部で、実施場所東側には太平洋に面した相馬港がある。また、近くには、相馬市の代表的な美しい景観である松川浦の観光名所もある。そのため、交流人口の多いエリアとなっている。例えば、事業実践エリアの隣の光陽サッカー場(図4の⑧)には、外部から年間8万人もの多くの来場者がある。

図4 スマートコミュニティ事業の実施場所

図4 スマートコミュニティ事業の実施場所

出所 IHI配布資料、「福島県相馬市で展開する スマートコミュニティ事業の取り組みについて」、2018年6月28日

 このような場所の一角を相馬市から借りて、スマートコミュニティ事業が展開されている。

スマートコミュニティ事業の設備構成

 図5に、スマートコミュニティ事業の具体的な設備構成を示す。図に示すように、大きく、

  1. 緑色の枠で囲まれた「スマートコミュニティ構築事業」設備
  2. 青色の枠で囲まれた「(福島県)地域復興実用化開発等促進事業」設備
  3. 赤色の枠で囲まれた「水素研究施設(水素研究エリア)」

という3つの区分の設備から構成されている。その中で「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」は、図5の黄色の点線で囲まれた「スマートコミュニティ(スマコミ)事業・水素研究エリア」に位置している。

図5 スマートコミュニティ事業の具体的な設備構成

図5 スマートコミュニティ事業の具体的な設備構成

出所 IHI配布資料、「福島県相馬市で展開するスマートコミュニティ事業の取り組みについて」、2018年6月28日

 それぞれを、具体的に見ていこう。

  1. そうまIHIグリーンエネルギーセンターは、今年(2018年)の4月に開所したばかりである。その敷地は約5万4,000m2、東京ドームおよそ1.5個分の広さである。そのうちの約3万2,000m2が太陽光発電設備のエリア、残りの約2万2,000m2が地域エネルギーマネージメント(CEMS)管理棟や大容量蓄電池設備,水素製造研究設備などがあるエリアとなっている。
  2. 赤い破線の矢印が太陽光の電力を供給するイメージで、この赤いラインはそうまIグリッド合同会社所有の自営線となっており、隣接する下水処理場や構内の①エネルギーセンター内の大容量蓄電池、②災害時の発電用の燃料電池発電設備(BCP)、③水素製造研究用の水電解装置、水素タンク、などの各設備に電力が供給されている。
     道路(国道6号)を渡った隣の敷地にある下水処理場のすべての電力も、この太陽光発電電力でまかなっている。あわせて、下水処理場で発生する汚泥を乾燥させるための下水汚泥乾燥設備や、バイオ燃料製造実用化開発にも、この自営線から電力供給が行われている。
  3. 図5の赤い線と平行している水色の線が、燃料電池で発電した電力を供給するイメージである。災害対応事業として、図5下の左端に示す復興交流支援センター(相馬光陽サッカー場内)にある災害対応設備には、図5右に示す水電解装置と水素タンクに貯蔵された水素を使って燃料電池で発電し、専用回線(自営線約0.6km)で電気を供給でき、防災拠点となっている相馬光陽サッカー場に、非常時に電力を供給することが可能となっている。

 2017年度は、各設備を構築するために、

  1. 図5の緑色枠のスマートコミュニティ構築事業の設備は、経済産業省のスマートコミュニティ導入促進事業の補助金
  2. 図5右の青色枠の水素製造研究設備と図5左の青色枠の下水汚泥乾燥設備は、福島県の地域復興実用化開発等促進事業費補助金

を含めて、総計約20億円程度の予算が投入された。

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