[特集]

福島県相馬市のスマートコミュニティ事業戦略とそうまIHIグリーンエネルギーセンター

― 再エネの余剰電力を最大活用して地産地消をめざす ―
2018/08/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

スマートコミュニティ事業:地産地消制御で余剰電力を最大利用

 前述したように、スマートコミュニティ事業では、太陽光の余剰電力を最大限使い切るということを基本方針にしている。この方針に基づいて、太陽光発電と蓄電池とあわせて、熱をつくる、水素をつくるという仕組みも構築されてきた。

 これを具体的に整理して示すと、図7のようになる。

図7 スマートコミュニティ事業 〜 地産地消制御で余剰電力を最大利用

図7 スマートコミュニティ事業 〜 地産地消制御で余剰電力を最大利用

出所 IHI配布資料、「福島県相馬市で展開する スマートコミュニティ事業の取り組みについて」、2018年6月28日

〔1〕水素製造システムに関する実証

 図7右上半分に示すように、太陽光の余剰電力を活用する水素製造システムでは、2種類の型式の異なる水電解装置「①アルカリ型と②固体高分子型(PEM型注6」を使って水素を効率的に製造し、貯蔵するという実証研究を行う。

〔2〕汚泥乾燥に関する実証

 〔1〕と並行して、太陽光の余剰電力を活用する汚泥乾燥に関する実証研究も行われている。下水処理場では太陽光の余剰電力を使って電気ボイラーで蒸気を生成して熱に替え、アキュムレータに蓄熱し、必要なときにその熱で、下水処理場で発生する汚泥を乾燥させる。その汚泥を燃料として使うバイオマス発電の可能性の実証研究を行う。

 〔1〕〔2〕の内容を通して、次のような開発や展開を行う。

  1. 一般送配電系統に接続できない、余剰電力の有効利用技術の実用化開発を行う。
  2. 今後、太陽光発電抑制注7に伴って、増加する余剰電力の有効利用技術として、他地域への電力供給の展開も視野に入れる。

▼ 注6
PEM:Polymer Electrolyte Membrane electrolyzer

▼ 注7
太陽光発電抑制:電力会社の系統容量が上限値に達した際に、太陽光発電の出力を下げるような要求が電力会社から太陽光発電事業者になされる仕組み。

地産地消制御による送電系統への逆潮流防止

 相馬市におけるスマートコミュニティ事業実証の電力供給システムでは、地産地消制御によって送電系統への逆潮流防止技術が開発されたことも特徴の1つである。

 現在、東北電力の送電系統の空き容量がゼロ(すなわちスマートコミュニティ事業側から東北電力側に余剰電力を流せない。逆潮流できない)という制約あり、このため、自営線に接続されている設備の中で、余剰電力を全部使い切るという課題を克服する必要があるからだ。このため、次のことを実現するため、太陽光発電側のパワーコンディショナー(PCS:Power Conditioning System)の制御も含め、逆潮防止制御システムが構築された。

  1. 東北電力系統への逆潮流をゼロとするため、常に買電量を0以上に制御することができるようにすること。
  2. 買電量が一定値以下に下がった場合、(逆潮流が発生しないよう)太陽光の発電量を急速に絞り込む機能の開発と、蓄電池の充電量を増加させることができるようにすること。
  3. さらに地域のエネルギーマネージメントを行っているCEMSからの日照量データから、太陽光の発電能力を予測して外部からの買電量を増減させ、同時に図7に示す電気ボイラーや水電解設備の負荷を制御したり、蓄電池の充放電制御をしたりするなどによって、太陽光発電の電力利用率を最大化できるようにすること。
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