コマツ:5G通信と光通信でブルドーザーを遠隔制御する「スマートコンストラクション」
コマツは、「もっと安全で、もっと生産性の高い、もっとスマートな未来の現場」をテーマに、コマツの「スマートコンストラクション」を実演した。
デモでは、CEATEC会場(幕張メッセ)と8km離れたコマツIoTセンターを、光通信と「超高速」「超大容量」「超低遅延」の特徴をもつ5Gモバイルネットワークで結び、5Gの移動局であるブルドーザーを遠隔制御した。
図3に示すように、オペレータはブース内に設置された専用コックピットに座り、IoTセンターにあるブルドーザーから、リアルタイムで送信される複数台のカメラ映像を見ながら、遠隔操縦で現場の土砂をならすという実演であった(写真9)。
図3 コマツが5G通信と光通信で実演した遠隔操作システムの構成
出所 編集部撮影
写真9 コマツの遠隔操作用オペレータの専用コックピット(左)と現場映像を映すコックピット前に設置された画面群(右)
出所 編集部撮影
エリクソン・ジャパン(5G基地局)、NTTドコモ(5G通信技術開発)、ソリトンシステムズ(車載カメラ映像のコーデック技術)、インテル(5G通信用移動局アンテナおよびチップの小型化)、沖電気工業(フライングビュー)、面白法人カヤック(コックピットのデザイン)などの企業が協力して、実演された。
ファナック:AI(機械学習)を駆使してロボットの精度を大幅に向上
FAやロボット、ロボマシン、FIELD systemを中核ビジネスとするファナックは、アーク溶接知能ロボット「FANUC Robot ARC Mate 100iD」を使用して、AI(機械学習)による高精度な軌跡制御のデモを行った(写真10)。
写真10 AIによる高精度な軌跡制御:FANUC Robot ARC Mate 100iDによるデモ
出所 編集部撮影
制御軸として6軸をもつARC Mate 100iDロボットが、小さな円弧を切断する場合の模擬動作の実演が行われた。実際には、写真10に示すロボットに円の指令軌跡情報(直径10mm、描画速度6m/分)を与え、ロボットがもつタッチペンで、タブレット端末上に円弧の軌跡を描かせ、AIの学習前と学習後の性能比較が行われた。
その結果、写真11に示すように、真円度注2について、①AI学習前は0.304mm、②AI学習後は0.127mm(ほぼ正しい円に近い)と、精度が大幅に改善され、AIによって、ロボットのモデル化精度が向上され、軌跡精度を改善できることを示した。
写真11 AI学習前とAI学習後の性能比較:ロボットのモデル化精度と軌跡精度を向上
出所 編集部撮影
AIソフトは、プリファードネットワークス(Preferred Networks、本社:東京都千代田区)と共同開発し、近々発売が予定されている。
チャレンジャー:台風でも発電可能な世界初の次世代風力発電機
次世代ビジネスを目指すスタートアップ企業による「J-Startupブース」には、セキュリティ分野からディープラーニング(AI)、eヘルス、スマートファクトリーなど多彩な新興企業21社が出展し、CEATEC会場に新しい息吹をもたらしていた。ここでは、創業2014年10月のチャレンジャー(東京都墨田区)が開発した、台風でも発電可能な世界初の次世代風力発電機(写真12)を紹介する。
写真12 会場で展示された模型(左)と沖縄県石垣市でフィールドテストを開始した10kW試験機(右)
出所 写真左は編集部撮影、写真右は https://challenergy.com/products.htmlより
この次世代風力発電機は、すでに2016年8月から沖縄県南城市で、フィールドテストを開始しており、最大瞬間風速33m/sの環境下で安定稼働を実証している。コア技術には、初めて「マグナス式」と「垂直軸型」を組み合わせた。
マグナス式とは、回転する円柱が風を受けたときに生じる揚力(マグナス力)を制御することによって回転が暴走するのを防止できる方式である。
同社は、引き続き2018年8月から沖縄県石垣市で、低格出力10kW試験機(量産機と同等の仕様)のフィールド試験を開始している。今後1年間で、発電効率や稼働率などを検証し、2020年から量産機の販売を計画している。
▼ 注2
真円度:円形形体の幾何学的に正しい円「指令軌跡」と「実軌跡」の狂いの大きさを示す指標(小さいほど性能がよい)。